本校が考える「多文化共生の学校づくり」とは

本校には全校児童の半数以上、約60%以上の外国につながる児童が在籍しています。国や地域も10から12に及びます。
 児童は、この多様な状況がまさに日常となっています。「多文化共生」の世界がすでに学校文化として根付いています。
 しかしながら、真の「多文化共生」とは、そんなに簡単なことではありません。社会生活の中ではまだまだ様々な偏見や差別が存在し、その中で苦しい思いや辛い出来事に耐えながら生活している人々がたくさんいます。
 本校における多文化共生の学校づくりは、国際理解だけにとどまるものではありません。また、持続可能な開発のための教育(ESD)においても、地球の裏側で起こっている世界規模の諸問題を考え、その解決に向けた意思や行動を模索することに特化した教育だけを行うものでもありません。自身のおかれている立場や経験に立脚し、子どもたち一人ひとりのセルフ・エスティーム(自尊感情)やアイデンティティ(自己同一性)、不合理なことに対する感覚あるいはその体験をもとにした、個々が「異質な存在」のままその「異質性を大切に」し、相互が「異質な存在どうしのままリスペクト」し合い、「異質性を生かし合う」関係性を育てる教育を行っていきたいと考えています。
 本校児童が、世間の荒波にもまれ、差別や偏見を乗り越え、それらを是正し、たくましく生き抜いていく。その苦しさや悲しさを知っているからこそ、将来、多様化する日本社会を支えるリーダーと成り得る。そのような未来志向型多文化共生の学校づくりをめざしています。

「それは自分の生活や経験にもとづくもの。自分という存在と向き合うもの。」
「それは自分とは異質である存在の異質性を知ること。その相互の異質さを、異質なままの距離で、共に生きていくもの=『Respectance』」
「それは相互の異質性を生かしてこそ生まれる新しいアイデア、考え方でもって、生活の諸問題を解決し、また、これまでになかった価値を生み出すもの」

 まだまだ概念的ではありますが、こうした感覚を児童が身に付け、将来を担うリーダー的な存在へと成長することを願っています。

新しい価値を生み出す ― 探求・読解プロジェクト

令和5年度、教育委員会の「探求・読解プロジェクト」を受け、多様性を生かした新しい価値を生み出す研究実践を進めています。 下の例は、3年生「南小オリジナル工芸品を生み出そう」  6年生「こども『ミナミ町づくり隊』」の実践例です。 いずれも、「自分のこと(特性・アイデンティティ・生活)」「自分と他者」「自分と世界」「差別や偏見」「言語・文化」などの日常的な学習の積み重ねがあった上での、新しい取り組み例です。

3年生 「南小オリジナル工芸品を生み出そう」

3年生 「南小オリジナル工芸品を作ろう」
 3年生では、図画工作科、道徳、総合的な学習の時間と、教科横断的なカリキュラムマネ
ジメントを行いながら、「オリジナル工芸品を作ろう」に挑戦しています。
 平野区にある、「クラフトパーク」とコラボし、クラフトパークの専門職人さんに来てい
ただいて日本の伝統的な工芸品を作る体験をしたり、自分の故郷である国や地域の文化を調
べ、その良さを生かしたオリジナル作品を、専門職人さんにアドバイスしてもらいながら製
作したりと、これまであまり見られなかった新しい取組、多文化を生かした新しい価値ある
作品づくりに挑んでいます。

6年生 「こども『ミナミ町づくり隊』」

6年生 「こども『ミナミ町づくり隊』」
6年生は、「こども『ミナミ町づくり隊』」と題し、新しい価値の生み出しに挑戦中です。
ミナミの地域の方と共に町の清掃活動を行ったり、地域の方のお話を聞いたりと、自身が町
づくりの一員であることを自覚していきます。
 日常的な「自分」という存在と向き合う学習、自分のもつ特性にかかわって、自分自身と
してプラスに思えること、マイナスにとらえてしまうこと、またその理由。世の中にある様
様な偏見や差別。
こうした学習を通して感じてきた自分の「生きやすさ」「生きにくさ」を、国語科の学習
「町の幸福論」の発展として、地元、ミナミの町づくりに反映させていこうという取組です。
具体的には、なんば駅前広場や沿線の「多文化共生の町づくり」を進めようと取組を始めら
れた南海電鉄さんとコラボし、実際の町づくりに、6年生自身の生の声を反映させることが
できないか、まさに進めているところです。
 これからの社会で言われている「新しい価値の創出」に直結する取組になるのではと期待
されています。