学校日記

お互いを大切にしましょう

公開日
2020/05/11
更新日
2020/05/11

お知らせ・ニュース

北恩加島小学校のみなさんへ
(家の方に読んでもらってください。)

 「わたしのいもうと」という絵本があります。ある時、この絵本の作者である松谷みよ子さんのもとに、一通の手紙が届きました。
 「わたしのいもうとの、話を聞いてください。」
 いじめにあい、学校へ通えなくなった妹のことを語ったその手紙に、心を動かされた松谷さんは平和を願い一冊の絵本にされました。

 「わたしは、小学校4年生の妹と一緒にこの町に引っ越してきました。妹は転校した学校で、いろいろな理由をつけて笑われ、いじめられ、ののしられました。とうとう、だれ一人口をきいてくれなくなり、やがて妹は学校に行かなくなりました。ごはんも食べず、口もきかず、心を閉ざしてしまいました。
 いじめた子たちは、中学生になってセーラー服で通います。ふざけっこしながら、かばんをふりまわしながら。でも、妹はずうっと部屋に閉じこもったまま。だまってどこかを見ているのです。そして、また年月がたち、妹をいじめた子たちは高校生。まどの外を通っていきます。笑いながら、おしゃべりしながら…。いじめられた妹は、ただ部屋に閉じこもって折り紙でつるを折るだけです。つるにうずまって、でも、やっぱりふりむいてもくれないし、口もきいてくれません。母さんは泣きながら、となりの部屋でつるを折ります。つるを折っていると、あの子のこころがわかる気がするの…。ある日、妹はひっそりと死にました。」

 このような内容の絵本です。絵本の最後のページには、「わたしを いじめたひとたちは もう わたしを わすれてしまったでしょうね あそびたかったのに べんきょうしたかったのに」という言葉が載っています。

 また、絵本のあとがきに次のようなことが書かれています。「いじめにあったその辛さは、地獄の底をはうようであった。自分より弱いものをいじめる。自分とおなじでないものを許さない。そしておそろしいのは、おおかたの人が自分でも知らないうちに、加害者になっている、または、なり得ることではなかろうか。」

 はじまりは、その人にとっての正義であったり、自分とは違うことの疑問であったり、ささいなことだったりします。ある人にとってはすぐに忘れてしまいそうなことが、だれかの心をこわし、加害者になってしまうことがあるのです。そして、いやな思いをした人はいつまでも忘れることができません。でも、いやな思いをさせた人は忘れてしまうのです。

 人間の体は、他の動物と比べ、とても弱いものです。ライオンやトラのような猛獣と戦って勝てる人はいません。逃げ足も遅く、簡単に捕まって餌になってしまいます。そんな弱い人間が大昔からこれまで生き延びるために武器にしてきたことはなんでしょうか。それは、集団をつくることです。一人では立ち向かえなくても、集団だと戦うことができたのです。そして、その集団を守るために、もっとも困るのは考えの合わないことでした。

 だから、人間は集団を乱しそうな人がいると二つの危険な、悲しいことをしようとするようです。
 一つ目は、その人をのけ者にすること。仲間に入れないようにすることです。
 二つ目は、その人を懲らしめようとすること。いやな思いをさせようとすることです。

 人間には、もともとこのような考えがあるようです。ですから、いじめをしている多くの人が自分でも知らないうちに、加害者になっているのです。
 人をのけものにしよう、懲らしめたいという気持ちが出てきたら、それはいけないことだと思いましょう。多くの場合は本人は気づかないので、周りにいる人が気づいたら、本人に教えてあげてあげましょう。「それは恥ずかしいことだよ。」「かっこ悪いことだよ」って。
 これだけが正しいということはほとんどありません。いろいろな人や考えがあっていいのです。学校が再開したら互いを認め合って、楽しい学校生活を送るようにしましょうね。
   北恩加島小学校長 若原 直人
            教職員一同