《渡邊学年主任の言葉》
合唱コンクールが近づくにつれて、どのクラスも競うように練習に励むようになりました。リハーサルのときに、「大きな声で」「笑顔で」「緊張感を持って」とアドバイスをしましたが、ちゃんと意識してくれたと思います。結果として順位がつきますが、私はどのクラスが入賞してもおかしくないと感じました。このあとの結果発表が楽しみですね。
さて、本日の課題曲「群青」について、みなさんがよく知っている話かもしれませんが、あえてお話します。「群青」が誕生した福島県の南相馬市立小高(おだか)中学校は、東日本大震災の津波で4名の生徒が亡くなり、さらに原発事故の影響で、生徒の大半が全国各地へ疎開していきました。のちに「群青」の歌を作った当時の1年生は、100名いたのがわずか6、7名となりました。残された生徒たちは心を痛め、音楽の授業では歌が歌えなくなりました。
ある日、音楽の小田美樹先生が、中学校を離れた生徒たちがどこにいるのか、大きな日本地図に生徒の顔写真を貼りつけていました。それを見た生徒たちが「遠いね」「どうやったら行けるの」「〇〇さんはどうしているだろう」「〇〇市はどんなところなんだろう」「でも、この地図の上の空はつながってるね」などと話していたのが、歌作りの始まりとなりました。
津波で亡くなった同級生や、遠い疎開先から戻ってこない同級生のことを思った作文や、他愛もない生徒たちのおしゃべりを、小田先生は2年間書きとめていき、それらをつなぎあわせて、生徒たちと「群青」の歌を作りました。長い間歌が歌えなくなっていた生徒たちも、徐々に歌声を取り戻し、卒業式で、みごと合唱することを成功させました。 その後、この「群青」は小高中学校の在校生たちに代々受け継がれているのはもちろんのこと、新聞やテレビで話題となったことから、全国的に広がっていくことになりました。
今私たちは、こうしてみんなで一緒に入られること、そして、この体育館で歌声を響かせることが、とても幸せなこと、かけがえのないことであることを改めて感じてほしいと思います。「群青」を作り上げた小高中学校のみなさんの思いを、みなさんも引き継いでほしいと思います。
高校では、音楽が選択科目の1つとなるので、クラスで合唱を行うのがこれで最後になるかもしれません。あとは、卒業式で思いの詰まった歌声をこの体育館に大きく響かせてくれることを期待しています。今日は素敵なコーラスをありがとう。お疲れさまでした。