校長室より 5月14日(木)
みなさん、おはようございます。校長の銭本です。
今週の月曜日に大変感動し、感謝するでき事がありました。ある保護者の方が大きな段ボール箱を抱えて学校に来てくださいました。その中には2000枚のマスクが入っていました。みなさんのウィルス感染拡大予防に使ってくださいとマスクをくださいました。この方の意思や希望に沿うように、みなさんとともに健康と安全に気をつけたいと思います。ありがとうございました。 今朝もにぎやかな小鳥たちに起こされました。毎日、喝を入れられているような気がします。 火曜日の夕刊に河合祥一郎先生がシェイクスピアのことを記事に載せておられました。シェイクスピアは「ハムレット」「ロミオとジュリエット」「マクベス」などの素晴らしい戯曲を残しています。戯曲というのは俳優によって舞台で演じられることを意図して書かれた文学作品です。ですから、劇場でも多く演じられています。チャンスがあれば劇を観てください。映画で「ロミオとジュリエット」を観たことのある人がいるかもしれませんね。河合先生はシェイクスピアが生涯に3回、今回のような感染症の流行を経験していること、そして、彼が残した作品にもその影響が出ていて台詞に疫病の影が感じられることなどを記事に載せておられました。 例えば「リチャード二世」の台詞 「賢者は座して災難を嘆くことをせず、直ちに災難の根を絶つものです」 「不幸というものは、耐える力が弱いと見て取ると、そこに重くのしかかる」(うっとうしい顔をしていてはダメですよ。不幸が重くのしかかってくるかもしれません。元気な笑顔で過ごしてください) また、「ハムレット」の「生きる」ことについての名台詞 「非道な運命の矢弾に耐え忍ぶ」 この台詞などは、自粛して家でがんばっているみなさんの気持ちを表しているのではありませんか。 さて今日は、3年生以上のみなさんが学習するリコーダーがシェイクスピアに関係がある楽器であることお話をします。「ハムレット」の中でリコーダーが登場します。主人公のハムレットがリコーダーについて語ります。 「おお、リコーダーだ! リコーダーを吹くのはうそをつくぐらい簡単なことだよ。穴を指で押さえ、そして口から息を吹き込みなさい。そうすれば美しい音が出る。みなさい、これがリコーダーだ。」 「うそをつくぐらい簡単なリコーダーの演奏」 みなさんもがんばってみてください。 実は、リコーダーという楽器は「ハムレット」が上演された16世紀初頭には王様や貴族が好んで演奏した楽器です。イギリスの王様ヘンリー8世は特にリコーダーが好きで、木のリコーダーだけでなく(当時はプラスチックがなかったのでほとんど木製でした)象牙や金でできたリコーダーを数えきれないくらい持っていたそうです。 現在、中学校3年生が6年生の時に西日本リコーダーコンクールで演奏したジョン・バストン作曲「リコーダー協奏曲」はこの頃の作品です。全校児童の前で演奏してくれたので高学年は覚えていると思います。イギリス前期バロックの香りがする名演奏だったと記憶しています。 結びに「ハムレット」の中から「どんなに絶望的な暗い夜でも、必ず希望の朝日は差してくる」という名台詞をプレゼントします。 The night is long that never finds the day.「明けない夜はない」 校長室より 5月13日(水)
みなさん、おはようございます。校長の銭本です。
今日は、水曜日。ずっと休校で家にいると「今日は、何曜日だっけ」と思うことはありませんか。昔、日本が戦争していたころ、戦艦や潜水艦に乗って大海原に出ていた船員は毎日同じ作業の繰り返しで、「今日は何曜日か」という曜日の感覚がなくなったそうです。曜日の感覚を持つことができるように、金曜日の夕食は決まってカレーライスにしたという話を聞いたことがあります。私は決まった日に決まったメニューというのはありませんが、週の半ば、つまり水曜日や木曜日になるとお好み焼きやたこ焼きが無性に食べたくなります。大阪人の証かもしれません。 昨晩は録画しておいた「ミッション:インポッシブル ローグ・ネイション」を観ました。英語ではMission:Impossible。つまりImpossible(不可能)という名のMission(作戦)に挑戦するトム・クルーズが演じる主人公イーサン・ハントのドラマシリーズです。今からお話することは、YouTube等でテーマ音楽を聴いてもらった方がより理解しやすいと思います。 音楽には拍子があります。2拍子、3拍子、4拍子などの拍子を知っていると思います。2拍子は「12 12 12 12」と数えられる拍子。3拍子は「123 123 123」と数えられる拍子です。では、ミッション:インポッシブルのテーマ音楽は何拍子でしょう。実際、音楽に合わせて数えてみてください。 2拍子、3拍子、4拍子で数えても合わないでしょ。正解は5拍子です。「12345 12345 12345」と数えるとピタッとあいますよ。 この曲の作曲者はラロ・シフリン。アルゼンチンの作曲家です。「ダーティーハリー」や「燃えよドラゴン」の映画音楽の作曲もしています。世間一般には、音楽の作曲は「豊かな情緒」を持った作曲家が曲の雰囲気やイメージを瞑想して行うと思われがちです。もちろん「豊かな情緒」やイメージをつくる才能も重要ですが、作曲という活動は化学の実験のようにいろいろな要素を混ぜ合わせて行います。 「主人公イーサン・ハントがワクワクドキドキするMission(作戦)に挑戦」する雰囲気を出すのにふさわしい「曲の速さ」をどうするか。速いテンポの方がいいですね。「音の切れ味」は短く、アクセントがある方がいいですね。では、拍子は。映画を見ている人がドキドキする拍子。「12 12 12 12」と数えられる2拍子。なんだか行進をしているよう。ワクワク感はない。「123 123 123」という3拍子。何か優雅に踊っているよう。4拍子。活発な感じはするけれど、ドキドキ感はない。そこで登場するのが5拍子です。 実は5拍子は3拍子と2拍子が合体した拍子です。「123 12 123 12・・・・」と数えます。これを繰り返すのですが、2拍子や3拍子に比べて、数えにくくありませんか。「123 12 123 12・・・・」の1のところだけ強く発音してください。「123 12 123 12・・・・」。ワクワク感が出てきたでしょう。 音の高さはどうするか。楽器は何を使うかなど、様々な要素を実験しながら音楽を作り上げていく。これが作曲です。音楽を聴くとき、演奏するときに作曲者がどのような実験をして作曲したのかを探るのはとても楽しいです。 「7拍子の曲ってあるんですか」という質問。いい質問です。ありますよ。内藤大助さんが出演している「長谷工」のCMソング。7拍子ですよ。数えてください。「1234 123 1234 123・・」ピッたりあいますよ。 いろいろな曲の「拍子当て」を楽しんでください。 校長室より 5月12日(火)
みなさん、おはようございます。校長の銭本です。
毎日、学習をがんばっているみなさんは素晴らしいと思います。 さて、みなさんががんばっている学習はざっくりと二つに分けられます。一つは暗記を行う学習、もう一つは問題解決を行う学習です。両方とも大切な学習なのですが、これからは問題解決を行う学習が特に大切になると言われています。 問題解決をする学習というのは、習った知識を使って、新しい問題を解く学習です。問題解決には、「算数の応用問題を解くときのように、正解を見つける学習」と「総合的な学習や社会科・理科などで様々な情報を使って自分なりの考えを造り上げていく学習。つまり答えが一つとは限らない学習」があります。問題解決を行う学習が特に大切になると書きましたが、その中でも後の方の学習がさらに重要になると言われています。なぜなら、これからの社会はいろいろなことが起こり、今までに経験したことのない危機に直面するかもしれないからです。新型コロナウィルスの感染拡大もその一つです。 答えが一つとは限らない学習の例をあげてみます。みなさんは交通安全のために信号を守って横断していますね。青は「すすめ」で、赤は「止まれ」ですね。では、黄色はどうするか。「黄色は注意」というのは知っていますね。でもどう注意をすればいいのか。答えは一つとは限りません。 「たとえば、横断歩道を渡る直前に青が黄色になってしまったら、みなさんはどうしますか。」 「止まって、赤が青になるのを待つ」とみなさんは答えてくれるでしょう。正解です。 「じゃあ、横断している途中で黄色になったらどうしますか。」 「えーっと、急いで向こうに渡る。」 「一歩か二歩、渡っただけのときでも、向こうへ走って渡ってしまうの?」 「そういうときは、戻る。戻った方が早いから。」 「引き返すか渡りきるかはどうやって決めるの。」 「半分以上渡っていたら向こう側へ急いで渡り、半分までだったら戻る。」 「半分はどうやって決めるの?」 「だいたい・・・。」 「そのときは走って渡るの。歩くの。」 「走って渡る。」 「走ると転ぶ確率が高くなって危ないのではないかな。」 信号が黄色に変わったとき、安全に横断歩道を渡るのにいろいろ考えます。考え方はいろいろあって正解は一つとは限りません。安全に渡りきる方法がすべて正解になります。 「新型コロナウィルス感染拡大のために仕事をやめて自粛する」「自粛して仕事ができないと給料がもらえない」という二つの問題の狭間で大人は最適解(実行可能なもっともよい答え)を考えています。私たち教職員も「感染予防の為にみなさんには家で学習してもらう」「みなさんの学習を進めるためには学校に来てもらう」という問題の狭間で悩んでいます。これからの社会は一つの正解で問題解決をするのではなく、いろいろな条件を組み合わせ、バランスをとりながら問題解決する力が求められると思います。そのためには、考えることをあきらめず、粘り強く考える態度が大切です。 登校日には「感染拡大予防」と「友だちや先生と親交を深める」ことのバランスを考えて、全員ではなく15人以下のクラスメイトが学級に入るようにしています。みなさんもこのバランスを考えて久しぶりの学校を楽しんでください。 入学オリエンテーションについて校長室より 5月11日(月)
みなさん、おはようございます。校長の銭本です。
今週は、登校日があります。元気なみなさんに会えることを楽しみにしています。 今朝も4時半頃から小鳥たちが一斉に鳴き始め、その鳴き声で目が覚めました。5時過ぎにはそれも収まるのですが、小鳥のさえずりで目が覚めるというより小鳥の喧噪(けんそう)で叩き起こされる感じです。田舎暮らしのつらさです。 前回は私を教育学に誘(いざな)ってくださった石井教授のお話をしましたが、素晴らしい先生との出会いは直接お会いしなくても本を通してでもできます。 まだ、30代の頃、道徳教育について研究していたことがありました。みなさんは「道徳って何?」と問われれば、どう答えますか。研究を始めるに当たってこの問いからつまずきました。辞書には「道徳とは無意識のうちに世の中に存在するものと認識している正邪(せいじゃ)(正しいことやよこしまなこと)・善悪の軌範。個人の価値観に依存するが、多くの場合は個々人の道徳観に共通性や一致が見られる。社会性とも関わる。」と解説してありました。この解説を読んでみなさんは道徳について理解できますか。納得しがたいでしょ。もっと小学生が理解できるような説明はできないものかと悩みました。そんなとき出会ったのが森毅先生です。 「このごろ道徳のあり方が話題になることが多いが、道徳というのは人間の生き方のおしゃれのことだと、ぼくは思っている。だから道徳は、社会に向かってより、なにより自分自身に向かって存在する。」と「21世紀の歩き方」という本の中で書いておられました。なんて素晴らしい、そして道徳の本質を極めた説明かと感動しました。「人間の生き方のおしゃれ」のための教育が道徳教育。ここから研究をスタートさせることができました。 私の研究活動にスイッチを入れてくださった森先生は京都大学の数学の教授なのですが、変人エピソードを数多くもっている先生でもあります。「京大変人講座」という本から紹介します。 まず授業を教室ではやらず、大学の構内に植わっている樹の下で講義をしていた(一説には人数が多すぎて教室に入りきらなかったという説もある)。次の週は、また違う樹の下で講義をした。次週はどこの樹の下でやるのか、学生たちには何も知らされず、みんなは講義が行われる樹を探して学内を右往左往したそうだ。気がつくと、ものすごい数の学生が、森先生の講義をする樹のまわりに集まっていたらしい。その姿はまるで、大勢の弟子たちに囲まれて菩提樹の下で話すブッダのようだった・・・と伝えられています。 「軽やかに生きる」ための金言も多くあります。 ○かしこい人に教わることはあほでもできる。あほから教わるのがほんとうのかしこだ。・・・・・・かしこいというのは頭が器用なのですね。物覚えがよかったり、物わかりがよかったりする。ただその分だけ物わかりが浅くなるんです。ものをわかるにもじっくりとわかったほうが、わかりかたにコクがあるんです。・・・どんくさいわりに好きで仕方がないから続けていたところ、なんとなく味のある大アーチストになったという人もいるじゃないですか。だから人間というのは化けるし、わからない。 ○ ぼくは他人よりすぐれた才能があるとすれば、それはいやなことでも楽しんでしまう能力だろう。・・・・正しさは伝染しないけれど、楽しさは伝染する。・・・よく「楽しい学校をつくろう」ってスローガンがあるが、「いやな学校でも楽しんでしまおう」のほうがよい。・・・・自分をすべて他人に評価してもらいたがるのにぼくは反対で、まだ他人に評価されない自分があると思わねば自分がなくなる。実力以上に評価されるよりは、評価以上の実力を隠し持っているほうがよい。・・・・子どもの頃、自分の親が思いどおりにならぬことを経験するのは普通。自分の子が親の思いどおりに行かぬのは当然である。・・・とにかくこれからの時代、今までに決めておいたことと違うことが出てくる可能性が高い。それを楽しむことにするか、いやだと避けるか。・・・・ちょっと身を引いて、ぼくの物語を楽しむ材料に いやなことで味をつけよう。 そろそろ学校から送られてきた学習課題に四苦八苦しているみなさんには、森先生が生きておられればこんなメッセージを送られるのではないかな。 ○ (難しい問題にぶつかったとき)ぼちぼちでええやん。そのほうがうまくいく。 ○ (問題を全部解けなくて困ったとき)まあ、こんなもんとちゃう。 気持ちを楽にして、森先生のように「いやなことでも楽しんで」課題に取り組んでください。 |
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