今日の一言 10月27日 西林幸三郎先生 講演 その5
- 公開日
- 2015/10/27
- 更新日
- 2015/10/27
校長雑感 一隅を照らす
西林先生が若かりし頃、子育て相談室でカウンセリングをしていました。
子育てに悩んだお母さんが先生のところに来ました。
暗く沈んだ表情は、その悩みの深刻さを物語っています。
いろいろと悩みをきくのですが、先生は何も言うことができません。
何を言っていいか、わからないのです。
カウンセリングは45分間。
ただただ、黙っていました。
お母さんも黙っています。
二人で、黙々と座っているだけ・・・・。
息の詰まるような45分でした。
・・・・時計の音だけが響いているような、
そんな静けさだったことでしょう。
ようやく長い長い45分が過ぎました。
ああ、全くうまくいかなかった・・・先生は申し訳なく思いました。
するとお母さんが、こう言いました。
「また来週来ていいですか?」
驚いたのは先生です。
何もできず、ただ黙っていたのに「また来ていいですか?」
耳を疑いました。
「もちろんです」
西林先生は嬉々としてこたえたそうです。
* * *
西林先生は指導教官にこのことを話しました。
「悩みを聞いたけれど、何も言う言葉が見つからなかったんです」
それで、君はどうしたんだ?
「ずっと黙っていました。」
何も言わなかったのか?
「はい、私もクライアントもお互いにずっと黙っていました。」
おおっ、なんとすばらしい!
君はカウンセリングが分かっている!!
・・・
実は、黙って、ただただクライアントの話をきくことは、カウンセリングの基本であり、またとても難しいことだったのです。
*** *** ***
さて、次の週、件(くだん)のお母さんが相談室にやって来ました。
とても明るい様子です。
そのお母さんは言いました。
「もう大丈夫です。わかったんです!」
え、何がわかったんですか?
「先週のカウンセリングの時間、ずっと考えていました。そしてその後もずっと考えていました。」
「そして分かったんです。」
「私は、あの子の母親なんだ!!!と」
*** *** ***
「私は、あの子の母親なんだ!!!」
≪子どもを助けることができるのは、母親の自分しかいない≫ということを見出したのです。
ただただ沈黙があっただけのカウンセリングでしたが、このお母さんが見出したことは、西林先生にとっても、大きな大きな価値を持つことになりました。
子どもにとってかけがいのない存在とは誰なのか・・・・。