学校日記

今日の一言 8月4日 縁を結べず

公開日
2016/08/03
更新日
2016/08/05

校長雑感 一隅を照らす

桑原翠邦 「風心雲想」 
1952年 個人蔵

公益財団法人 かすがい市民文化財団 HPより

・・・

母は書を嗜んでいました。
父の転勤で東京に出たのを機に
良い先生に習いたいと、どういうご縁か桑原翠邦という、たいそう立派な書家に習うことが出来たのです。
東宮御所書道御進講にもなった人でした。
この先生の教室に通い始めて数年後、
私が音楽大学に進み、しばらくした頃。

書道教室から帰ってきた母が顔を真っ赤にして
嬉々として話しはじめました。

「今日、教室で誰にあったと思う?」

「小澤さくらさんっていう人とあったの。
 さくらさんは、あの小澤征爾さんのお母様。」

 びっくりしている私に向かって

「あなたが音楽をしていることを話したら、

 “あら、じゃあ征爾に聴いてもらったら”

 といわれたの!!聴いてもらうでしょ!!」

何ということでしょう。
あの尊敬してやまない小澤征爾(偉大すぎる人には恐れおおくて“さんづけ”なんてできません)に自分の演奏を聴いてもらえる機会がくるとは。

ところが、当時の私は愚かでした!不遜で傲慢でした。

「小澤征爾に聴いてもらうなんて無理だよ。まだそんなにうまく演奏できない」
と、言ったのです。

では、いつになったら聴いてもらえるほど上手になるのでしょう?
上手になるって、そもそもどのくらい上達することなんでしょう?
小澤征爾に褒めてもらいたかったのでしょうか?
彼から何かを習いたいとは思わなかったのでしょうか?

・・・

私は、小澤征爾氏と縁を結べなかったのです。

今でも後悔しています。
自分がどれほどの者か分かりもしないのに、少し上手になれば、小澤征爾に聴いてもらえるほどになるとでも、ほめてもらえるとでも考えていたのでしょうか。

この時のことは今でも忘れられません。

***

人と縁を結ぶこと
人生を決定づける瞬間を逃さないこと。


もし、あのときに・・・・という後悔をしないように
ちょっとした躊躇に負けないように、いつも前進し勉強中であること、
ことがあるたびにこの時のことを思いだします。