学校日記

今日の一言 1月23日 石炭をばはや積み果てつ。

公開日
2017/01/23
更新日
2017/01/23

校長雑感 一隅を照らす

私は本を読めない、と思っていた時間がとても長かったのです。

なぜ、読めないと思いこんだか、
いつそんなふうに刷り込んだのか、
わかりません。

読めるようになったのは、サラリーマンになり、結婚したころからでしょうか。

名作を教えて!
どんな本に感銘を受けた?
今読んでいて、とても面白いと思う本は?

会う人会う人に同じ質問をしては、教えてもらった本を読んでいました。
その頃、衝撃的に出会った本が「舞姫(森鴎外)」です。最初は全く読めなかったし、字面を追うこともできませんでした。

・・・
 石炭をば早はや積み果てつ。中等室の卓(つくえ)のほとりはいと静にて、熾熱燈(しねんとう)の光の晴れがましきも徒(あだ)なり。今宵は夜毎にこゝに集い来る骨牌(カルタ)仲間も「ホテル」に宿りて、舟に残れるは余一人ひとりのみなれば。

( )は私の書き込みです。

この文を当時は読み進むことができませんでした。読み始めた日は断念したのですが、
幾日か置いてふたたび挑戦しました。
そうすると、ふと何かを掴めたと思ったらすらすら読めたのです。
そして、鴎外の文体の美しさに、「舞姫」を読むときはつい声を出して読んでしまうようになりました。

・・・

説明文や新聞の記事や取り扱説明書を読めるようになることも、もちろん大切です。
私のように大人になってから本に出会うのも悪くはないのかも知れませんが、
できるものなら、子どもたちには、
文学の世界にできるだけ早い時期に出逢い、その世界をたくさんたくさん知ってほしいと思います。