今日の一言 6月26日 あがる
- 公開日
- 2017/06/26
- 更新日
- 2017/06/26
校長雑感 一隅を照らす
「第九! 何百回、演奏したかわからない。
それでも、緊張して、手が震える。
それどころか、年齢を重ねるほど、音を出すのが怖くなる・・・
体に染み込むほど練習し演奏して来た曲なのに、
入りが怖くて、休みの小節を一生懸命に数えてる!!」
日本でトップのオーケストラの団員で、ティンパニー奏者としても日本で頂点に立っていた人でした。定年退職間近の頃にそう言っていたそうです。
・・・
昨晩、40年近くプロの打楽器奏者として活躍している友人と会いました。
このティンパニー奏者のはなしは彼から聞きました。
彼自身も同じように緊張するし「あがる」そうです。
「本番で手が震える。ここ20年ぐらいそうなんだ」
「ボレロのスネアで手が震えたら最悪だよ」
ラベル作曲の「ボレロ」の冒頭は、スネアドラム(小太鼓)が
「タン・タカタタン・タカタタン・タン・タン
タカタタン・タカタ タカタ タカタ」
というリズムを、ソロで、しかもピアニシモで演奏します。
そして、全曲を通してずっとこのリズムをたたき続けます。
この曲で、スターになるのは、打楽器奏者です。
だからこそ、手が震えるのです。
彼はこう付け加えました。
「プロは、誰でもわかるような間違いは絶対にしてはダメだからね」
・・・
カラヤンが率いるベルリン・フィルは、昔から名手ぞろいで有名でした。
オーボエ界では、今でもレジェンドの「ローター コッホ」という演奏家もベルリン・フィルの団員でした。
ある日、日本のオーケストラでモーツアルトのオーボエ協奏曲を演奏することになりました。彼は、もう何度となく演奏した曲です。名手中の名手です。そんな彼が、これから本番という直前までステージの袖で、2楽章のあるフレーズを何度も何度も練習していたそうです。レの音から1オクターブ上のレの音にレガートで跳躍するパッセージです。吹いても吹いても、「ダメだ」と言うように、首を振り、更に繰り返し何度も何度も練習を続けるのだそうです。
顔色はだんだん青白くなり、手も震えています。
見るからに緊張していることが見てとれたそうです。
・・・そして、本番!
それはそれは素晴らしい演奏だったそうです。
特に、レからオクターブ上のレに跳躍する件の個所は、
この世のものとは思えないほど美しかったそうです。
・・
私が学生時代、先生(元NHK交響楽団団員)に仕事をもらって、
先生といっしょに演奏会に出たことがありました。
いよいよ本番というとき、弟子の私はずいぶん緊張して見えたのでしょう。
薄暗いステージ袖で「名人だって、あがるんだがら、お前があがって当たり前!」とはなしてくださったのが、この話でした。
***
だれでも、あがる・緊張する。
「それで、いいんだよ」
運動会の時から、ずっと同じことばかり考えています。