学校日記

今日の一言 1月23日 避難訓練 その2 不審者

公開日
2018/01/23
更新日
2018/01/23

校長雑感 一隅を照らす

「実施日はお知らせしますが、時間はお知らせしません!」

えっ!。
聞こえるか聞こえないかわからないほど小さな叫び声。
校長先生の眉間に皺がよります。

「やってみましょうよ。
 火事のときの避難訓練は子どもたちがどう動くかが
 大切かも知れませんが、
 不審者対応の避難訓練の目標は、教員がどれだけ冷静になり、
 子どもたちの安全確保のために動けるか!ではないですか?」

 事務局長だった私は、少したたみかけるように言いつづけます。

「日程は決めましょう。
 犯人役はミュンヘン総領事館に勤務するドイツ人にたのみましょう。
 休み時間に中庭から、不審者が侵入します。

 何時間目の休み時間か分かりません。
 どこから入るか分かりません。

 校長先生は、不審者侵入の第一報を聞いたら
 児童生徒の避難誘導指示を全教員に出します。
 子どもたちは校舎内へ。安全が確保されます。
 
 校舎のすべての扉を施錠します。
 不審者が校舎内に侵入できないように。
 諦めた不審者が学校の敷地の外に出たら、訓練の終了です。」

***

こんなにも真剣な提案をしたのには理由がありました。

私がミュンヘンの日本人国際学校に採用されたは、2004年1月。
同年の1月29日に、ソウル日本人学校で襲撃事件がありました。
登校時間、警備の薄かった校門から堂々と男が侵入し、児童の頭を斧で殴ったのです。幸い子どもの命に別状はありませんでしたが、文部科学省初等中等教育局国際教育課は世界各地の日本人学校と補習授業校に安全対策再確認の通知を送っていました。
「実効性のある安全対策を講じること!!」
強い語調の文章だった記憶があります。

また、2001年6月の大阪教育大学附属池田小学校の事件も私にとってそれほど過去のものではありませんでした。

***

キャーという叫び声がする中庭(写真下)。避難指示を出す校長先生。指示にてきぱきと反応し、子どもたちを校舎内に誘導する先生たち。子どもたちと全教職員の安全が確保されました。不審者(役)のドイツ人(サングラスをかけ、野球帽をかぶり、手には何やらハンマーのようなものまで持っています)は、しばらく中庭をうろうろすると学校の敷地から出ていきました。

・・・訓練終了!!


「今までの教員生活のなかでこんなに足が震えた避難訓練はなかった。」
「とても貴重な体験をさせてもらった。素晴らしい訓練だった」
宮崎から派遣されていた校長先生の顔は高揚して赤くなっています。

総領事館の危機管理担当者(警視庁からの出向者)、その部下で不審者役をしたドイツ人。訓練に立ち会った地元の警察官。

実際の危機に際しても役に立つ実効性のある訓練だったのでは・・・
彼等も経験したことのなかった避難訓練だったようです。

・・・

在外の避難訓練には、日本ではあまり聞かない特殊なものがありました。
それはテロ・爆破予告に対する訓練です。
(つづく)

写真・上=ミュンヘン日本人国際学校・校舎外観
     2003年12月に完成したきれいな校舎でした。
写真・下=中庭から校舎を見たところ
     全面芝生の中庭。
     休み時間には、ここで100名ほどの児童生徒が遊びます。