学校日記

今日の一言 2月26日 働き方改革 15 私にとっての事件の数々4 電車不正乗車

公開日
2018/02/26
更新日
2018/02/26

校長雑感 一隅を照らす

「個人的な問題とは受け取らない」ということは、
「個人の事情を斟酌しない」「個人的な思いや優しさを優先しない」
ということでもあります。

【電車の不正乗車・事件】
 息子と1週間ほどの旅行に行きました。
 「バイエルンチケット」という割引チケットを
 購入することにしました。

 普通だと2人で100ユーロ以上するのに、
 このチケットは家族で利用すれば何人でも 
 30ユーロほどでバイエルン州内一日乗り放題でした。
(10年前の割引システムです。
 数字などが若干事実と異なります。
 大体の傾向値とイメージしてください)
 
 ****
 今のバイエルン・チケット(日本語)システムが随分変わりました。
 ↓
 https://www.bayern.jp/bayern-ticket-bavaria-ticket
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 この日、私はバイエルン・チケットを握りしめ、
 意気揚々と電車に乗り込みました。
 11歳だった息子はたくさんの荷物を持っています。
 かなり込んでいる電車の中、やっとのことで空席を見つけ、
 荷物をひとまず座席の間やほかのお客さんにお願いして隙間におかせて
 もらったりして、座席に腰かけると、ぽーっとして出発を
 待っていました。

 そこに車内放送が入りました。
 バイエルン地方の方言なまりのきつい、聴き取りにくい放送です。
 「おはようございます。この電車は間もなく発車します。
  〇○行きの電車です。
  この電車は、バイエルン・チケットは利用できません!
  お気を付け下さい」

 一瞬耳を疑いました。
  
 「今なんて言った?!」
 「バイエルンチケット使えないって言った??」

 慌てふためく父親に、ドイツで生まれ育った息子は、
 「そうだよ。そう言った」とあくまで冷静です。

 えー、どうして!何でダメ?
 急いでチケットに印字してある規約を読むと
 「9時以降に発車する電車に適用」と書いてあります。
 私たちの電車は、なんと「8時59分発」

 しまった!と思いましたが、この電車に乗って、
 次の電車に乗り継いでいかないと
 予定の時間までに目的地まで行くことができません。

 こういう際には、融通が利かない(当たり前ですね)ドイツの鉄道。
 1分の違いでも、利用できない電車に乗っている
 私たちがいけないのです。
 私もすぐにあきらめ、差額を払って、
 この電車をそのまま利用することにしました。

・・・

「間違ったチケットを持っていること」「差額を払うこと」をすぐに申し出ようと車掌さんを探しました。
ところが車掌さんは、発車前のお客さんの誘導や安全確認で手一杯です。
ドイツの電車は、電車が走りだすとすぐに検札のため車掌さんが車内に来るので、それまで待つことにしました。

 車掌さんもお仕事で忙しいし、荷物と11歳の息子を置いて車掌さんのところまで行くには、危ない国です。荷物がとられるか?息子が誘拐されるか?
そんな国です。

私は、とにかく車掌さんの検札を待つことにしました。

・・・

かの車掌さんは、私の説明を聞くとあまり深く考える様子もなく
おもむろに「どうやって支払うか」と尋ねてきました。

そして、(結局最後まで一度たりともにこりとしなかった)彼は、
私の差し出したクレジットカードを無言で受け取り、
淡々とチケットの再発行の手続きを始めました。

「分かってくれた」と思ってホッとしていた私の手に渡されたチケットは
正規のチケット2人分と罰金チケット。合わせた金額は270ユーロ!!

「なんですか、これ!」私は、驚きのあまり、叫び声にもならない声をあげました。
 それから電車が次の駅に到着するまで「ケンカのような交渉」が続きました。

車掌さんが最後まで譲らなかった主張:
どんな状況であろうと、私が検札に来る前に、あなたは自己申告しなければいけませんでした。もし私が業務上の理由で検札に来なかったら、あなたは自己申告しましたか?

あなたがどのような行動をとる可能性があったのか、それを考えるのは私の仕事ではありません。
事実は、あなたが間違ったチケットを持って乗車していたこと。検札が来るまで自己申告しなかったこと。以上の二つです。クレームは、クレーム窓口へ言ってください。

***

後日、クレーム窓口へ電話し、文書でも抗議しました。

「間違ったチケットで乗車したことは重大なミスであった。しかし、父親として息子の面前で犯罪者扱いされ、罰金まで支払わされたことに対して強く抗議する。また、日本人である私はその様な不正は行わない。罰金の払い戻しと顧客に対する間違った対応について謝罪を要求する」

窓口の方から、とても丁寧な返事が届きました。

「あなたが息子さんの前で不正乗車の疑いをかけられ、父親として忸怩たる思いをなさったことに同情します。しかし、私たちは公正公平な立場をまもらなければいけません。あなたが、父親であること、日本人であることは、結果を覆す理由には一切なりません。今後のために、ひとつ助言があります。請求された額が間違っていると判断した時は、決して支払ってはいけません」

***

当時11歳だった息子の感想は、「これがドイツだよ」

 
(写真 上:紙製のバイエルン・チケットのチケット入れ?チラシ)
(写真 下:ドイツ鉄道 Deutsche Bahnの車掌さん。手に持ているのはポータブル発券機)