今日の一言 10月23日 指揮者の役目?
- 公開日
- 2018/10/23
- 更新日
- 2018/10/23
校長雑感 一隅を照らす
「ただ、ぶるぶる震えているだけだった」
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ある有名な日本人の指揮者の、学生時代の話しです。
彼は貧乏な学生。でも立派な指揮者になりたくて、一生懸命勉強していました。
あるとき、ヨーロッパの超一流のオーケストラが来日しました。
指揮者は、クラシックファンでなくても誰でも知っているような
有名な音楽家です。
曲目は、彼がちょうど勉強していて、どうやって指揮していいかわからなくて困っていた曲でした。
曲名は
クロード・ドビュッシー
『「牧神の午後」への前奏曲』
(Prélude à "L'après-midi d'un faune")
8分の9拍子。フルートの独奏で始まります。
リズムのつかみどころがない、ふわふわしたメロディー。
どうやって振るんだろう(指揮するんだろう)???
彼は、お金がないので公演を聴きに行くことができません。
でも、諦められない。あの指揮者はどんな指揮をするんだろう。
見てみたい!絶対に見たい!
コンサート会場は、上野の東京文化会館。
実は、ある方法で忍び込めることは、芸大生の中では有名でした。
彼は、その方法で、まんまと会場に忍び込みました。
そして、木管楽器が演奏するひな壇の中に潜り込んだそうです。
ここからは、指揮者がよーく見えるのです。
・・・
いよいよ、待ちに待った本番が始まりました。
ドキドキしながら、その最初のタクトを見つめました。
指揮者が構えてました。
真っ黒な燕尾服のまえに、白いワイシャツの袖。
手の場所をはっきりとこちらに教えてくれています。
さー始まるぞ。
ん? ん? 何だかぶるぶる震えだしたぞ?
あれ?フルートの音がし始めた?!
もう始まってるの?
なんだこりゃ!?
・・・
そうです!
指揮者は、ただぶるぶる震えているだけだったのです。
顔は何だか恍惚としています。
フルートの音と言えば、それはそれは美しかったそうです。
まさに、牧神が奏でる笛の音。
・・・
彼は、ハッと気づいたのです。
どんなふうに指揮をするとか、テクニックばかり考えていたけど、
要するに「いい音が出ていれば、いいんだ!!」
それから彼は、才能を開花させ、世界的な指揮者になったそうです。
(有名な話です。ご存じの方もいらっしゃると思います。細部は多分にフィクションとなっています。ご容赦ください)