学校日記

今日の一言 1月17日 こころに刻む日 2019

公開日
2019/01/17
更新日
2019/01/17

校長雑感 一隅を照らす

デュッセルドルフに勤務していた頃、日本から転勤してきた女性スタッフがいました。私は小さなオフィスのマネージャーです。仕事から生活面のケアまで私の仕事でした。

現地で永く暮らしている私のような者は、
日本でしか生活をしたことが無いスタッフが
ドイツ生活に困らないよう、住宅の用意もしたものです。

入居初日。
部屋の窓から見えるのは、北ドイツのありがちな曇り空、そして隣接する小学校。

ドイツの住宅のあれこれ・・・
契約書の内容から、設備について、鍵の開け閉め、ゴミ捨てまで。丁寧に説明していきます。

日本との違いを説明していくうちに、彼女のふるさとの話しになりました。ふるさとは「神戸」。あの震災を経験していたのです。

・・・

「こんなに素晴らしい環境で仕事ができるんですね。何だか申し訳ないな・・」

私は、意味がつかめず黙っていると、

「だって私は、幸せになってはいけないんです」

学校からか、子どもたちの声が、遠くかすかに聞こえてきます。
彼女は続けました。

「私の姉と祖母は、私の目の前で燃える家の下敷きになって・・・」
 ことばは途中で消えていきました。

・・・

幸せになってはいけない・・・
なんてつらい想いなんだろう・・・

そう思いながら、言葉が出てしまいました。

「幸せになろうよ!」

何も言ってはいけなかったのかも知れません。
今から考えると、よくあんなことが言えたなとも。

・・・

それから、10数年後に大阪で再会しました。
お酒の好きだった彼女が「今日は禁酒ですッ」とニコッとしました。
結婚して子どもができたのです。

彼女は「幸せ」なっていました。

・・・

どれほどの想いを乗り越えたのか想像もできません。

ただ、1月17日が来るたびに、

十数年前、曇り空のデュッセルドルフ。
薄暗い部屋で「幸せになってはいけない」と言った、
あの時の顔と
数年前、晴れ渡った大阪の街で見せた
幸せな笑顔を
思いだします。

***

2017年1月17日の校長雑感より

http://swa.city-osaka.ed.jp/swas/index.php?id=e591242&frame=weblog&type=1&column_id=478048&category_id=8174