全校集会
- 公開日
- 2025/10/20
- 更新日
- 2025/10/20
お知らせ
全校集会のようすです。
校長先生のお話のあと、卓球部の表彰(大阪府女子団体 第3位)がありました。
【校長講話「未来をひらく『発見』と『好奇心』 — 2025年ノーベル賞の日本人研究者たち」】
2025年、日本から2人の研究者がノーベル賞を受賞しました。
今日はそのお二人の研究と、その意味をみなさんと一緒に考えてみたいと思います。
1 坂口 志文(さかぐち しもん)先生 — ノーベル生理学・医学賞(免疫研究)
坂口先生は「制御性T細胞(regulatory T cell, Treg)」という免疫細胞を発見しました。
この細胞は、免疫(体の防御機能)が強く働きすぎてしまうことを抑える「ブレーキ役」を担います。
たとえば、風邪の原因になるウイルスをやっつけた後、不必要に炎症が続いて周りの細胞を傷つけないようにするのが制御性T細胞の役割です。
坂口先生は、特に Foxp3 という遺伝子 がこの制御性T細胞をうまく育てるしくみをコントロールしていることも明らかにしました。
こうした発見は、自己免疫疾患(自分の体を誤って攻撃してしまう病気)やアレルギー、
さらにはがん治療にも応用できる可能性があります。
私たちの体は、ウイルスや細菌など「外敵」と戦う必要がありますが、同時に「自分自身」を攻撃してはいけないというバランスがとても大事です。
制御性T細胞の発見は、このバランスを理解する鍵を与えてくれました。
坂口先生の研究は、「当たり前に働いている体の仕組み」を深く調べ、その中に新しい事実を見つけ出す力の大切さを教えてくれます。
2 北川 進(きたがわ すすむ)先生 — ノーベル化学賞(物質化学・材料科学)
北川先生は、金属有機構造体(MOF:Metal–Organic Framework) という新しいタイプの材料の開発でノーベル化学賞を受賞しました。
MOFとは、「金属イオン」と「有機分子(炭素を含む分子)」を結びつけて、内部に微細な穴(孔=あな)をたくさん持つ三次元の構造をもたせた物質です。
この構造の特徴は、その穴を利用して気体などを選んで出し入れできることです。
たとえば、二酸化炭素を吸着して地球温暖化の問題に対処したり、水素やガスを貯蔵したりといった応用が期待されています。
北川先生のMOF研究は、材料の設計と化学の知識を融合して、新しい物質を“分子レベル”でデザインするという先端的な成果です。
MOFのような新素材は、私たちが普段見たり触れたりできる物とはかなり異なる“見えない世界の構造”を扱います。
しかし、そこを理解し設計できるようになると、環境問題やエネルギー問題に取り組む道が開けます。
北川先生の研究は、化学とアイデア、そして根気強い実験の組み合わせが生む発明の好例です。
ここまで、2025年ノーベル賞を受賞した**坂口志文先生(生理学・医学分野)と北川進先生(化学分野)**のお話をしました。
どちらも、「当たり前と思われてきた世界」を丁寧に観察し、新しい視点で問い直すことで大きな発見をした研究です。
みなさんにも、日常の「なぜ?」を大切にしてほしいと思います。
「どうして空は青い?」「どうして植物は太陽の方を向く?」「どうして砂糖を溶かすには温度が関係するのか?」
こういう身近な疑問を追いかけていくうちに、将来、みなさん自身が「ノーベル賞」を夢見るような発見をするかもしれません。
最後に、2人の先生が教えてくれることを心に留めておきましょう。
1 好奇心を忘れないこと
2 目の前の現象に疑問を持つこと
3 諦めずに調べつづけること