学校日記

今日の一冊

公開日
2020/04/30
更新日
2020/04/30

コラム

 長い長い休校中です。学習も頑張ってくれているでしょうが、こんな時こそ読書もいいのではないですか。そこで、おすすめの本を紹介していこうと思います。

『ひかりの魔女』 著者:山本甲士

 真崎家では、大学浪人生の光一をはじめ、中学生の妹は夜に出歩いたり荒れた生活を送り、父親は会社の業績が悪くリストラされるかもしれない状態。母親はパートや家事に追われいつもイライラしていました。まさに家庭崩壊寸前。
そんな笑顔が消えた家庭に舞い込むおばあちゃんとの同居の話。
おばあちゃんと一緒に住んでいた伯父が亡くなり、この最悪な雰囲気の家庭が、おばあちゃんを引き取ることになるのです。
 85歳のおばあちゃんとの暮らしが始まり「ボケるんじゃないか?」と心配していた家族でしたが、足腰も丈夫で自分のことは自分でするなど元気いっぱいのおばあちゃん。
時々変なポーズをしていたり、炭火でごはんを炊いたり....。
 そんな中、宅浪中の光一が始終家に居る為、おばあちゃんの外出にお供することになります。何年も前におばあちゃんが書道教室をしていた時の生徒に会うためでした。
 しかし、そこで出会う元教え子たちのおばあちゃんに対するすさまじい慕いっぷりに光一は戸惑ってしまいます。
おばあちゃんは一体何者? もしかして宗教の教祖様とか?
 ただの書道教室の先生をここまで慕い、年賀状を何十年も欠かさない関係とは一体なんなのでしょうか?
 誰もが「おばあちゃんが一番気にかけているのは自分」と思ってしまう秘密は一体何なのでしょうか?
 それは「言葉の魔法」なのです。このおばあちゃん、「やさしい嘘」を効果的に使い、相手を上手く乗せてしまいます。たとえば、背筋もシャンとしているのに、バスに乗るときわざと腰を曲げて、上手に席を譲ってもらうしたたかさも持ち合わせながら、その譲ってくれた相手と話し込み、バスを降りる頃には、譲ってくれた人が晴やかな気持ちになっている….。

 真崎家にやってきたおばあちゃんは、本人たちも気が付かない間に、一家の崩壊をさりげなく立て直します。相手の心を読み、負担にならない形で手を差し伸べたり長い人生で培ったコネを利用したり、良いと思ったことは継続したり....。
一つひとつを見れば、現実にありそうなことを積み上げて、いつしかとても幸せな空間がおばあちゃんを中心に広がっていきます。
 やさしい魔女が人々を幸せにする、とても心温まる一冊です。

(3年担当:豊田先生のおすすめ)