明るい春の陽ざしに、校庭の桜のつぼみも大きくふくらみ始めました。このうららかな春の佳き日、本校卒業式にあたりまして、平素より本校の教育活動の推進に多くのご支援を賜っておりますご来賓の皆様には、卒業生の門出のためにご臨席をいただき、高いところからではございますが、心よりお礼申しあげます。ありがとうございます。
さて、卒業生のみなさん、ご卒業おめでとうございます。
ただ今、みなさんにお渡しましたこの卒業証書は六年間、様々な困難を乗り越え、精いっぱいがんばってきた証です。小学校の勉強はすべて終わりました。中学生になってもしっかり頑張ってくださいという願いも込められています。
とりわけ、最高学年としてのこの1年間は、学校の真のリーダーとして、もてる力を存分に発揮してきました。みなさんが、今日、立派に卒業できるのは、みなさんの努力もさることながら、日ごろからみなさんを見守ってくださっている多くのこの九条南地域のみなさんのお蔭であり、何より家族の支えがあっての卒業証書だと思います。
今日、家に帰りましたら、家族のみなさんに卒業証書を見せ、感謝の気持ちをしっかり表してほしいと思います。
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卒業にあたって、私から二つお話をします。
一つ目は、全校朝会でもお話をした「走った距離は、裏切らない」ということです。
平成16年8月、オリンピックの発祥の地ギリシアのアテネでオリンピックが開催されました。このなかの女子マラソンで野口みずき選手が気温35度という猛暑の中でのサバイバルレースに負けず金メダルを獲得しました。「走った距離は、裏切らない」という言葉は、その野口選手の言葉です。
野口選手は、オリンピック前の5、6月には、中国の麗江(れいこう)という標高2400mの高地で、世界一になるための練習をしたそうです。男子でも、なかなかこせない月間1300kmの走り込みもしています。ふつうの選手なら悲鳴をあげそうな内容だそうですが、弱音を吐くこともなく、頑張りぬきます。
野口選手を指導している藤田監督は、「野口は、陸上部に入ってきた時は、チームでブービー賞でした。」(つまり、チームの中で、最も遅い部類に入っていたそうです)「でも、一番長く、練習を続けてきた。毎日努力してきた。きっと、努力以外は、何もない」という話をされています。「走った距離は裏切らない」という言葉は、だれにも負けない、世界一の努力をすれば、きっと、夢はかなえられるということを教えてくれています。野口選手は、初マラソンから6戦5勝の強さを誇った元世界女王。現在37歳で体の衰えを自覚しながらも、練習に励み、今月、13日の日曜日、名古屋ウィメンズマラソンに挑戦しました。
順位は、23位でしたが、野口選手は、「悔いはない」と言い切ってます。言葉より、走る姿で自分を表現する野口選手らしいこのひたむきさが、応援する者の心を打ちました。今回の名古屋ウィメンズマラソンでは、力を出し切ることの大切さを私たちに教えてくれました。
6年生のみなさんは、特にこの1年間、学習面においても運動面においても、これまでに経験したことのないほど、多様な体験をしてきました。与えられたチャンスは、最大限生かし、チャレンジすると決めたら、最後まで粘り強く頑張りぬく。そして、結果を出すのがあなたたちでした。様々な体験を通して、努力し続けることの大切さや夢は必ず叶うということが分かったと思います。これは、みなさんの一生の財産です。
二つ目は、「困難に直面したとき、最初からできない理由を探すな」ということです。
夢を追うと必ず一度は、大きな挫折を味わうものです。その時、人は「あきらめる口実」を探し始めてしまいます。そのような時こそ、「この九条南小学校で学んだチャレンジ精神を思いだし、続ける理由」を探してください。みなさんの前に立ちはだかる大きな壁は、実は大きな扉かもしれないのです。
努力した者が成功するとは限らないかもしれません。しかし、成功した者は必ず努力しているというのも事実です。運命は、努力したものだけに偶然という橋をかけてくれます。
ピンチの裏側には、必ずピンチと同じ大きさのチャンスが用意されていると信じて、決して「もうどうしようもない」とあきらめないでください。長い目で見れば、人生に失敗や挫折はありません。すべては、次へのステップ台なのです。
でも、どうしたらよいのか、どの道を行けばよいのか、本当に分からなくなったら、焦らず、立ち止まり、もう一度来た道を元にもどりなさい。きっと、違った景色が見え、新たな景色が見え、新たな決意がわいてくることでしょう。
みなさんは、いよいよ4月から中学生です。
中学校の時期は、人生を左右する大切な時期でもあります。「走った距離は裏切らない」「困難に直面した時、最初からできない理由を探すな」という言葉を時々思いだし、自分の目指す未来に向かって、力強く突き進んでください。
終わりになりましたが、保護者の皆様、お子様のご卒業、誠におめでとうございます。
今も申しあげましたように、巣立ちゆく子どもたちは、本当に素直で元気があり、色々なことを積極的に吸収しながら、目標に向かって精いっぱい努力する子どもたちばかりです。私は、1年生の時からこの子どもたちの成長を見守ってきましたが、高学年になってからの成長ぶり、とりわけ、この1年間の成長ぶりは、眼をみはるものがあります。
本校は文武両道の教育を基軸とし、勢いと活気にあふれた地域に誇れる学校をめざしています。学力・体力両面の向上を目指して、様々な場面で学校全体をリードしてくれたのが、この子どもたちです。本当によく頑張ったと思います。
今日の子どもたちの晴れの姿をご覧になり、成長の喜びとともに、これまでの子育ての苦労が今頭をよぎり、感慨もひとしおのことと存じます。
この6年間、九条南小学校に寄せていただきました温かいご厚情に対しまして、心より厚くお礼申しあげます。
私たち教職員一同、心を込めて子どもたちの指導にあたってまいりました。不十分なところもあったと反省していますが、日々の子どもたちの成長や頑張りに励まされたことも多く、今感謝の気持ちでいっぱいです。これから、多感な中学生の時代を迎え、心悩ますことも多いかと思いますが、親子のコミュニケーションを大切に、お子様とともに歩んでくださるようお願いいたします。
最後になりましたが、ご来賓の皆様には、公私何かとお忙しい中、ご臨席を賜り、子どもたちの晴れの門出を祝福いただきまして、本当にありがとうございます。
子どもたちが中学校に進みましても、これまで以上に地域の一員として温かいご支援・ご指導いただきますようお願い申しあげます。
今後とも、この九条南地域の宝として子どもたちを見守り、育ててくださいますとともに、九条南小学校に変わらぬご支援を賜りますことをお願い申しあげます。
卒業生のみなさん、夢と希望を胸に自分らしさを失わず、自然体で力強く前進してください。みなさんのこれからの活躍と健康を心からお祈りし、私の式辞といたします。
平成28年3月17日
大阪市立九条南小学校長 大西 正孝