厳しく感じられた冬の寒さも緩み、春の息吹があちらこちらで感じられる今日の佳き日に、阪南中学校を巣立たれる69期生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。
ご来賓の皆様には、公私何かとご多用の中をご臨席賜り、卒業生の新たな旅立ちに華を添えていただき、誠にありがとうございます。高いところからではございますが、心からお礼を申しあげます。
さて、69期生の皆さん、私は、今、皆さん一人ひとりに卒業証書を手渡しました。この卒業証書は、中学校の卒業だけてはなく、義務教育を修了した証でもあります。この卒業証書の意味をしっかりと受け止めてほしいと思います。
今、皆さんの心の中には中学校三年間の、楽しかったこと、うれしかったこと、感動したこと、そして、つらかったことや悔しかったことなど、たくさんの思い出が走馬灯のようによみがえっているのではないかと思います。今日の卒業式は本校を巣立っていく日であると同時に、新たな旅立ちの日でもあります。過ぎ去った三年間を静かに振り返り、成長を実感するとともに、これからの旅立ちに思いと覚悟を新たにする、これが本日の卒業式の意義です。
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私は、平成27年4月に本校に赴任しましたので、君たちとは入学式から三年間、共に学校生活を送ってきました。この三年間、さまざまな場面で皆さんの活躍を目にして、阪中生として皆さんが持つ素晴らしい力を実感することができました。特に、三年生になってからは、さすが三年生という自覚ある態度や行動を、さまざまな場面で実践してくれました。どの学校行事も三年生が中心となり、若々しいエネルギーが満ち溢れるすばらしいものでした。
なかでも、信州方面へ向かった修学旅行では、クラスの絆が深まった栂池高原のペンションでのクラスごとの宿泊や、すばらしい景色の中での雪遊び、仲間と力を合わせた犀川でのラフティングなど、私にとってもとてもよい思い出となっています。また、体育大会での学年演技、男子の一糸乱れぬ演武や、女子のソーランは本気で頑張る凛とした姿、やりきった後の達成感みなぎる姿に、私を含め多くの人が心を動かされました。
合唱コンクールでは、どのクラスも心が一つとなって、歌声が体育館全体に響き渡り、聴く者に大きな感動を与えてくれました。どのクラスも優劣をつけがたい高いレベルの合唱を披露してくれました。
様々な場面で、阪南中学校をリードする三年生として、何事にも一生懸命取り組み、後輩に素晴らしい足跡を残してくれました。たくさんの感動を本当にありがとう。
今日の卒業式は、人生の一つの節目であり、新たなスタートラインに立つ記念すべき日です。今日の輝かしい門出に際し、はなむけとして私が皆さんに期待することを三点お話ししたいと思います。
一つ目は、「常に目的意識を持って行動する人になってほしい」ということです。「将来自分はこうなりたい」という具体的な目標を持って行動するという事です。大切なことは目標に向かって努力することです。努力することによって、はるか遠くにあった目標がだんだん近づいてきて実現に至るのです。地道な努力なしでは夢の実現は不可能でしょう。世の中で一流と言われる人たちは、単に素質に恵まれていたということだけでなく、高い目標を掲げ、目標に向かって努力していたから一流と言われるようになれたのです。大空に羽ばたこうとする鳥は、大きく翼を広げて空高く舞いあがろうとする力を最大限得ようとします。皆さんにとって、その翼にあたるものが、目標であり、夢にほかなりません。ぜひ高い目標をかかげ、夢の実現のために努力していく人になってください。
二つ目は、「自分に責任の持てる人になってほしい」ということです。これからはグローバルな視点を持ち、物事を見つめ考え、そして判断していくことが求められます。国際的な舞台で活躍するときに大切なことは、何よりも信用の問題です。この信用の基本となるのは、自分の責任は自分で果たすという自己責任です。自分の責任は何であるか、これをきちんと考えられる人でないと、これからの国際社会で十分な活躍はできないでしょう。皆さんは、これまでの義務教育の間、家族をはじめとする多くの大人の庇護のもとで生活してきました。しかしこれからは、自分でしたことは自分で責任を負う、まさに大人社会に近づく大きな一歩を踏み出すのです。自分のしたことの結果を、他人のせいにしたり、逃げたりせず自分で責任をとれる人になってください。
三つ目は、「常に感謝する気持ちを忘れない人になってほしい」ということです。本日卒業証書を手にすることができたのは、皆さん一人ひとりの努力があったことはもちろんですが、その影には多くの力添えや愛情があったことは理解できると思います。多くの人の援助や支援があって一人前の大人に成長できるのです。若いうちは、大いに援助や支援を受け、それを活用し力を蓄えてください。これから続く長い人生の中で、多くの人と関わり、さまざまな人たちから有形、無形の恩恵を受けて成長し、生き続けていくわけです。それを当然のことと考えるような人だけにはなってほしくはありません。どうか、感謝する気持ちを大切にしてほしいと思います。
先月行われた韓国の平昌での冬季オリンピックでは、日本人選手の活躍に興奮や感動をたくさん味あわせてもらいました。メダルを獲った選手、残念ながらメダルを獲れなかった選手も、オリンピックに出場したいという目的を持って練習し、夢を実現させたわけです。そして、インタビューで「多くの人に支えられてきました。本当に感謝しています」と話していました。これも、今お話しした「目標を持つ」「感謝の気持ちを持つ」に通じると思います。
未来に向かって着実に歩みを進めていく皆さん、皆さんの前には平坦な道ばかりがつづいているわけではありません。幾多の困難が待ち受けていても、「目標」「責任」「感謝」の三つのことを忘れなければ、必ず道は開けてくると思います。
改めまして、ご列席いただきました保護者の皆さま、お子様のご卒業、誠におめでとうございます。人生で最も多感で、しかも著しい成長期にあるお子様がこうして卒業の慶びの日を迎えられましたことは、感慨もひとしおのこととご拝察申しあげます。子どもたちはこれから親元を離れ巣立ちの季節を迎えます。手を離しても目を離すことなく、いつまでも深い愛情で見守ってあげていただきたいと思います。これまで本校の教育に対しまして、ご理解とお力添えを賜りましたことに、心からお礼を申しあげます。本当にありがとうございました。
最後になりましたが、卒業生の皆さん、卒業は「別れ」ではありますが、次のステップへの出発でもあります。阪南中学校で学んだ三年間を、自ら誇りに思い、どんなときにも「夢と希望」をもって、これまでに培った「知識」をこれから生きていくための「知恵」に変えて、これからの人生を力強く歩んでいってください。健康には十分留意され、ますます活躍されるよう心からお祈りして式辞といたします。
平成30年3月14日
大阪市立阪南中学校長 山崎 英志