新しい春の訪れが感じられる今日のよき日に、本校第75回卒業式を挙行いたしましたところ、ご来賓の皆様方には、公私何かとご多用のなか、ご臨席を賜り、誠にありがとうございます。高い所からではございますが、卒業生、教職員とともに心よりお礼申しあげます。
そんな中で、卒業証書を授与した、93名の卒業生の皆さん、卒業おめでとうございます。君たちは、私が東生野中学校の校長となって、7回目の卒業生となります。慣れたものと思っておられる方がおられると思いますが、卒業証書を手渡した時の君たち一人ひとりの表情を見てますと、言葉に表すことの出来ない、毎年違う感情が生まれ、それをおさえるのに大変でした。また、ご来賓の皆様方をお招きしての卒業式は令和になって初めてで、従来の卒業式開催が5年ぶりとなったことと合わせて、大変緊張しています。
さて、皆さんは本日をもって中学校3年間の課程を終了いたしました。これまで皆さんは、家族の暖かい励まし、地域の方々のご協力、先生方の指導により、学力の向上はもとより、心身の健やかな成長をすることができたわけです。多くの方々に支えられてきたことに、感謝の気持ちを持ってもらいたいと思います。
思い起こせば、君たちの入学式は令和3年4月7日、二日前の4月5日から「まん延防止等重点措置」が適用され、制限のある中での入学式でした。4月25日からは3回目の緊急事態宣言が始まり、今までとは違う「我慢」「辛抱」が続く中学校生活が始まりました。そんな入学式で私は君たちに「夢を持ち、夢の獲得に向かい、中学校生活を送りましょう」と述べました。本当に「我慢」「辛抱」が続く中で夢を持てるのか、獲得できるのか、不安だったことでしょう。だから先生方は君たちに、様々な場面で、夢を見るだけではなく自分の手に入れるため三年間サポートしてきました。
まずは、「どのように社会、世界と関わり、よりよい人生を送るか」これは学びに向かう力で人間性を求めてきました。そして「何を理解しているか何ができるか」知識や技能の向上を求めました。最後は「理解していること、できることをどう使うか」これは思考力・判断力・表現力等の向上を必要としました。与えられたことをするだけではなく、何事においてもまずは自分で考え、自分で答えを導き出すこと。そうして、卒業をむかえたこの日、君たちは大きく成長をしてくれました。
成長の一つとしてあげるのが修学旅行です。行先は先生方で決めましたが、中身はほとんど君たちで計画し実行しました。1日目はクラス分宿、活動班で自然の中での活動を堪能しました。2日目は全員同じホテルで過ごし、レクレーションから食事など生活すべてのルールを守り、全員が楽しい時間を過ごせました。
また、運動会と文化祭においても、最上級生である君たちが中心となって学校行事を進めてくれました。運動会ではコロナ禍で中止になっていた東生野自慢の入場行進、今回も当初予定していなかったのに、君たちからの要望で学年種目の入場時に取り入れました。強制されることなく自分たちで大きな声を張り上げ、見事な隊列を披露しました。
文化祭の舞台発表では、企画から運営まで全てを先生方の力を借りることなく、君たちだけで台本作成、構成、キャスティング、照明係、道具類作成の裏方さんなど三年生全員一丸となって見事に行いました。
人間力を高めることのできる課外活動においても君たちの活躍は立派でした。特にラグビー部は大阪府大会において42年ぶり3回目の優勝、全国大会初出場で準優勝。ソフトテニス部は君たちが一年生の時にでき、創部三年で大阪府大会ベスト16になりました。他のクラブは残念ながら輝かしい結果は残せませんでしたが、三年間の充実した活動はこれからの生きる力となるのは間違いありません。
入学時、我慢・辛抱の必要とする制限のある学校生活ではありましたが、そのことに負けることなく見事に卒業する時が来ました。三年間君たちを見守ってきた学年主任の河野先生はこの子たちと別れるのはとても寂しい、まだまだサポートしていきたいと私に話されました。おそらく三年生担当全員の先生が同じ気持ちだと思います。君たちの中にも東生野を卒業するのは寂しい、まだまだ通いたいと思ってくれる生徒もいるでしょう。しかし、夢を獲得するには次のステージに上らなければなりません。
「どんな夢も、それを追う勇気さえあれば実現させることができる」
ミッキーマウスの生みの親で、ディズニーランドの創設者、ウォルト・ディズニーの有名な言葉です。卒業を迎える今、新たな夢や目標に向かって進む勇気を持ってください。たとえ大きな困難があっても、あきらめずに前進し、夢を叶えるための努力を惜しまないことが大切です。皆さんの次のステージが素晴らしいものに満ちていることを信じています。
最後になりましたが、保護者の皆様方、お子様のご卒業、誠におめでとうございます。自分の世界ができて、自立をはじめた我が子の成長に、一抹の寂しさを覚えつつも、思わず目を細めておられるのでは、ないでしょうか。これまでの数々のご苦労に敬意を表しますとともに、心からお祝いを申しあげます。
お子様を三年間お預かりしましたが、必ずしもご満足のいくような教育ができなかったかもしれません。しかしながら、卒業生は、これからの人生を本校で学んだことを基礎にして、力強く生き抜いていってくれるものと信じております。
お子様は、これから親元を離れ、巣立ちの階段を一歩一歩登っていきます。親という字は木の上に立って見ると書きます。手を離しても、目を離すことなく、いつまでも深い愛情で見守ってあげてください。
令和6年3月13日
大阪市立東生野中学校 第26期生
第18代校長
川田 浩二