高速船の張り紙が「問い」になる。? 海流と生態系から広がる学びの視野 ?
「レインボージェット」にて豊かな学びが展開されています。
乗船して間もなく、生徒の一人がある掲示に注目しました。 「航海中には、クジラなどの海洋生物や海中浮遊物等との接触を避けるため、急旋回・緊急着水を行う場合があります。」 この張り紙は、日常生活ではまず目にしないものです。 とくに大阪湾や瀬戸内海を航行する一般的なフェリーでは、同様の警告表示は多くありません。 その掲示を見たある生徒が、ふと問いを発しました。 「同じ日本の海域なのに、なぜ大阪湾ではこのような注意が少ないのだろう? もしかすると、*外洋性生物の分布密度や海流構造*に違いがあるのでは?」 ??短い発言でしたが、そこには明確な「仮説形成」の芽が宿っていました。 【地理的・生態的な差異への気づき】 実際に、大阪湾と日本海とでは、海洋環境に顕著な違いがあります。 - **大阪湾(瀬戸内海)**は、内湾性の閉鎖系に近く、潮流の流動性が比較的低く、外洋生物の回遊も限られています。生態系は沿岸種中心。 - 一方、*日本海は開放海域* であり、リマン寒流や対馬暖流が交錯する動的な海流環境にあります。この環境においては、クジラやイルカなどの大型海洋生物の回遊も報告されています。 この違いが、船の運航方針や安全対策にも直結していることを、生徒は「掲示物を通して」実感したのです。 【教育的意義:知識の受容から知の構築へ】 このような瞬間にこそ、探究学習の本質が表れます。 生徒が「なぜそうなっているのか?」と問いを発すること。 そしてその問いが、 *地理・生態・技術・安全という多領域に連結し、深い学びの契機となること。* 知識を与えるのではなく、「知識が生まれる瞬間」に立ち会うこと。 これは教師にとって何よりの教育的成果です。 たった1時間弱の乗船時間に、ここまでの密度ある学びが展開されることは、 本校の探究学習が単なる形式ではなく、*実体として根づいている証左*と言えるでしょう。 自然と対話し、掲示物を「意味のヒント」として読み解く その行為そのものが、探究の根幹です。 本校3年生は、今この旅路の中で、 「見る」「考える」「つなげる」「問う」その全てを体現しています。 そしてこの後、隠岐の島という“リアルな教材”の中で、さらなる学びが始まります。 今後の活動にも、どうぞご期待ください。 ![]() ![]() 現在、高速船「レインボージェット」にて隠岐の島へ移動中
― 自律型学習者育成のためのフィールドベースド・エデュケーション実践報告 ―
本校3年生は現在、七類港を出港し、高速船「レインボージェット」にて隠岐の島町へ移動中です。 この学習行程は、文部科学省が推進する「主体的・対話的で深い学び」の具現化を意図した探究学習の一環として計画されています。特に、本校では1年次より縦断的に取り組んできた探究型学習の総括的実践として、本修学旅行を位置づけております。 【隠岐諸島という“学びのプラットフォーム”】 隠岐の島町は、日本ジオパークにも指定される特殊地形と複合生態系を有する地域であり、地理学・環境科学・地域社会学といった多領域にわたる学術的探究対象を提供しています。 この地域で行うフィールドワークを通じて、以下のような学習目標の達成を期待しています。 - *地域課題の現地観察と仮説検証* - *行政機関との対話を通じた実践的社会参画体験* - *観光・定住促進に関する仮説的提案の構築と発信* 【海上移動中の視座】 現在生徒たちが乗船する海域は、対馬暖流とリマン寒流が交差する生物多様性に富んだ水域であり、自然環境への理解を深める観点からも教育的意義があります。 海面に目を向ければ、無数の事象が“問いの起点”として機能します。 - なぜこの海域にこれほど多くの生物が存在するのか - 地理的孤立と文化的多様性の関係性は何か - 小さな島が持つ観光資源としての価値の特性とは この“移動”そのものが、単なる移動ではなく、*学びの布石となる知的刺激の機会*です。 教育とは、知識を得ることではなく、世界を問い直す力を育てること。 そしてその力を社会に向けて表現する場こそが、今、生徒たちが向かう隠岐の島なのです。 今後の活動についても、随時報告いたします。 本投稿をご覧の皆さまには、ぜひ本校の教育活動へのご理解とご関心を賜れますようお願い申し上げます。 ![]() ![]() 天気も回復しました!
とても過ごしやすい気温です。
今から約1時間船の旅です。 ![]() ![]() 探究の旅、いよいよ現地へ。行きのバスも“学びの時間”でした。
本日早朝、墨江丘中学校3年生は予定通り出発し、七類港に無事到着しました。
このあと、生徒たちは高速船「レインボージェット」に乗り、隠岐の島を目指します。 ここまでの道中、生徒たちは各バスごとに活動の時間を過ごしました。 レクリエーションや音楽、映像鑑賞などを通じた交流は、単なる“娯楽”にとどまるものではありません。 それぞれのクラスの個性が現れる中で、 生徒たちは「集団の中で自分の役割をどう果たすか」「他者とどう関わるか」といった、 *協働性や関係構築力*を自然なかたちで発揮し合う機会となりました。 また、行きのバスの空気は、 探究学習で育んできた「主体性」や「自律性」が着実に身についていることの証でもありました。 発表や現地での行動に備え、心と頭の準備を整える貴重なプロセスだったと捉えています。 そして、いよいよ「隠岐の島」へ。 この島は、単なる旅の目的地ではなく、 3年間かけて築き上げてきた探究学習の集大成を発揮する「実践の場」です。 これまで生徒たちは、 隠岐の島町の現状を自ら調べ、課題を見出し、データを分析し、改善案を考えてきました。 今日から始まる3日間で、その提案を実際に行政の方々へプレゼンテーションします。 リアルな課題にリアルな現場で向き合う?? その経験は、学校内では決して得られない、「社会に開かれた学び」の体現です。 この旅を通して、 生徒たちは、自分の考えを社会に届ける意義を知り、 一人ひとりが“地域とつながる一歩”を踏み出してくれることを願っています。 どうか引き続き、生徒たちの挑戦と成長を見守っていただければ幸いです。 ![]() ![]() いよいよ隠岐の島へ
無事に七類港に到着しました。
今から高速船に乗船します! ![]() ![]() |
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