平成29年度卒業式 式辞
- 公開日
- 2018/03/29
- 更新日
- 2018/03/29
校長室から
例年になく雪の多い、寒い冬を終え、本校正門の桜が開花し始めた、春の訪れを感じる今日の佳き日。
平成29年度 卒業証書授与式のご案内をいたしましたところ、何かとご多用の所を6年生の成長と、その門出を祝うために、多くの地域・ご来賓の方々のご臨席を賜りました。深甚の感謝を申しあげます。誠にありがとうございます。
さて、小学校の課程を終え、晴れの卒業式を迎えた90名の6年生のみなさん、ご卒業おめでとうございます。先ほどみなさんに卒業証書をお渡ししましたが、担任の呼称に応え、一人一人が自分の言葉で「将来の夢」を語ることができました。どの夢もあなたらしく、また堀川の子どもらしく、とても立派な姿でした。
小さい身体に期待と不安を一杯に詰め込んで、入学式に臨んでから、早や6年。すくすくと成長し、特に最高学年の6年生となって、運動会やマーチング、修学旅行や学芸会などの行事では、規律ある行動と、持ち前の創造的な表現能力を発揮し、自分たちの力をいかんなく発揮してきました。その度に、多くの人に感動を与えてきました。それぞれの場面は、昨日のことのように鮮明に脳裏に焼き付いています。
しかし、思い出してください。最初から全てがうまくいく、順風満帆であったわけではありませんでした。一つの役割、一つの課題を最後までやり切ることは、どの人にとっても、とても大変でしたね。うまくできない自分に腹がたったことでしょう。友達との気持ちのずれや誤解が、いさかいに発展したこともありました。先生たちに叱られたこともありました。また、共に思い悩む仲間の姿をたくさん見てきたことでしょう。その度に、友だちや先生方の協力や励ましに何とか支えられ、しんどさや厳しさを乗り越え、汗をかき、時には涙をながしながら、ようやく高い目標に届いた日々でしたね。そして、簡単ではないことをやり遂げた後には、替えがたい充実感・達成感がありました。
保護者のみなさま、お子様のご卒業、誠におめでとうございます。それぞれのご家庭では、日々、お子達のりっぱな成長を喜ばれる一方で、真剣な、思いつめたような、時には苦しそうな表情にハラハラしながら応援していただいたことと思います。誕生の日から、小学校を卒業するこの日まで、喜怒哀楽を共に家族で分かち合い、常にお子様を愛情深く育てられました。保護者のみなさまの感慨も一入の事と拝察いたします。いつの時代も子育てほど大切で、かつ大変な事業はないと思います。時間に追われるような生活の中、時にはお子様の笑顔に支えられながら、この厳しい社会を生き抜いて来られた、というのが実感ではないでしょうか。そのご苦労に敬意を表したい思います。お子達はいよいよ「思春期」を迎え、親からの「心の自立を果たす」という、重要な人生の通過点、節目に達することになります。今まで以上にこの子どもたちと心を通わせながら、さらなる成長への道筋を見守って頂きたいと思います。
改めて、卒業生のみなさん。みなさんが生きていく未来社会は混とんとしています。情報があふれ、何が正しいのか、何がまちがっているのかが分かりにくい世の中になっています。私たちは何をたよりに、どのような基準でこれからの時代をいきていけばよいのでしょうか。
ここで歴史小説家の司馬遼太郎さんの言葉を紹介したいと思います。司馬さんはこの文章を30年前に書きました。『二十一世紀を生きる君たちへ』の一節です。
「君たちは、いつの時代でもそうであったように、自己を確立せねばならない。 —自分に厳しく、相手にはやさしくー という自己を。そして、すなおでかしこい自己を。二十一世紀においては、特にそのことが重要である。二十一世紀にあっては、科学と技術がもっと発達するだろう。科学技術が、洪水のように人間をのみこんでしまってはならない。川の水を正しく流すように、君たちのしっかりした自己が、科学と技術を支配し、よい方向にもっていってほしいのである。」 という文章です。
少し難しい文章ですが、これまで六年間、さまざまな場面で自分の力を出し切ってきたみなさんなら理解し、心に留めることができると信じています。みなさんは私だけでなく、ここに集まった人すべての「希望の種」です。「夢の力」を信じて「強い心」「正しい心」「美しい心」をもつ大人に成長してください。みなさんの活躍を期待しています。
結びになりますが、本校の学校経営と教育環境の充実にお力添えを頂きました学校協議会のみなさま、本校教育のパートナーとして深いご理解と力強いご支援を頂きましたPTAのみなさま、そして本校の子どもたちをわが子のように、常に温かい眼差しで見守り、育んでいただきました地域・ご来賓の皆様に深く感謝申しあげます。卒業後も地域で生き、地域で育つ子どもたちを、引き続きお導きくださいますよう、宜しくお願い申しあげます。
PTA心づくしのお祝いのコサージュ、お世話になった方々からの祝電、先生方の思いがこぼれる玄関の装飾、たくさんの人の温かさに包まれ、前途を祝福されて、今、みなさんはこの堀川小学校を巣立っていこうとしています。
この幸せを胸に、実り多い中学校生活を送られることを心から祈念して私の最後の卒業生へのはなむけの言葉といたします。
平成30年 3月19日
大阪市立堀川小学校長 林田国彦