夏が来ると『冬がいい』と言う
冬が来ると『夏がいい』と言う

太ると『痩せたい』と言い
痩せると『太りたい』と言う

忙しいと『暇になりたい』と言い
暇になると『忙しい方がいい』と言う

自分の都合のいい人は『善い人だ』と言い
自分に都合が悪くなると『悪い人だ』と言う

借りた傘も　雨が降れば邪魔になる
金を持てば　古びた女房が邪魔になる
所帯を持てば　親さえも邪魔になる

衣食住は昔に比べりゃ天国だが
うえを見て不平不満の明け暮れ
隣を見て愚痴ばかり

どうして自分を見つめないのか
静かに考えてみるがよい
一体自分とは何なのか

親のおかげ
先生のおかげ
世間様のおかげの固まりが自分ではないか
つまらぬ自我妄執をすてて
得手勝手を慎んだら
世のなかはきっと明るくなるだろう
『俺が』『俺が』を捨てて
『おかげさまで』『おかげさまで』と暮らしたい

（詩人・上所重助：友人のおばあちゃんの壁の張り紙の写真より）