今日の一言 6月10日 本を読もう!! 【6】赤いろうそくと人魚
- 公開日
- 2019/06/10
- 更新日
- 2019/06/27
校長雑感 一隅を照らす
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北方の青いさびしい海にすむ人魚。その母親のせつない願いによって、人間の世界で生きるようになった美しい娘のたどる運命が、赤いろうそくのほのおのゆらめきとともに、ロマンチックな詩情をただよわせます。
貧しさのために欲に目がくらんだ、ろうそく造りの老夫婦の心変わり、香具師(やし)に売られた人魚のむすめを乗せた船が難破し、数年ののち、その海岸の小さな町がほろびるという暗い結末も、ゆたかな色彩と詩情にささえられて、幻灯のような美しさです。
引用:小川未明童話集「野ばら」 講談社青い鳥文庫 P.201
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子ども時代に読んだその物語を鮮明に覚えていました。
教科書に載っていたのでしょうか。
登場人物のすべてに注がれる作者の慈悲深くも、しかし悲しいまなざし。
読み進むごとに、その美しい情景が鮮やかに目の前に浮かび、美しい人魚の母とその娘、どんな時もどこか哀しい表情の老夫婦が、その舞台のうえで名演を演じます。
絵本にもオペラにもなった作品だそうですが、頷けます。
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「人間の住んでいる町は、美しいということだ・・人情があってやさしいときいている。」
「人間は、この世界のうちで、いちばんやさしいものだときいている。そして、かわいそうなものや、たよりないものは、けっしていじめたり、苦しめたりすることはないと聞いている。」
引用:小川未明童話集「野ばら」 講談社青い鳥文庫 P.6-7
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小川未明の生きた時代から長い年月がたちました。
美しい人魚の母が抱いた「理想の人間の世界」に、
令和の時代の人間の世界は、少しでも近くなっているのでしょうか。
私は、子どもたちに「人魚の母」の期待に応えるような世界をのこしてやりたいな・・と願うのでありました。