あるお寺に、お坊さんになる修行をしているお弟子さんがいました。

季節は秋。
日差しは細くまっすぐに地面に向かい、
空気は清々しく澄み切っています。
落ち葉が本堂の周りにもたくさん散っています。
日の光に少しばかりキラキラして見えました。



その時、本堂からできてきた和尚さんが言いました。
「本堂の周りを、掃除しなさい」

お弟子さんは、はい、と応えると一生懸命に、
落ち葉を一つ残らず取り去ってきれいにしました。
掃除をしました！と言って、和尚さんに見てもらうと・・

「まだまだ・・・」と言われました。
えっと思いましたが、落ち葉が取り切れていないのだと、もっと念入りに掃除をしました。

そうじをしました！と言って、和尚さんに見てもらうと・・
「まだまだ・・・」と、また言われてしまいました。

えっと思いましたが、もっと念入りに掃除をしろと言うことか！と、もっともっと丁寧に塵一つないほどきれいにしました。

そうじをしました！と言って、和尚さんに見てもらうと・・
和尚さんは、ふーんと鼻から小さく息を吐いて
「分かっておらぬな」と言うと、山のようになった落ち葉の中から、
ひとつかみすると、パーっとそれをまき散らしました。

色とりどりに染まった落ち葉は、本堂の前の庭をそれは見事に彩ったのです。
お弟子さんは、ぽかっと口をあけ、目を真ん丸にしました。
和尚さんは、何も言わずに本堂に入っていきました。