ドイツのことをいろいろ書きましたが、私は居心地の悪さを何度も感じてきました。
そんなふうに人のことを見るんだ!
これをSachlichというのかな?
日本に帰りたいな・・・と、この種の居心地の悪さを感じるたびに思っていました。
「個人的な問題とは受け取らない」ということは、
「個人の事情を斟酌しない」「個人的な思いや優しさを優先しない」
ということでもあります。
自動車の鍵・事件
電車の不正乗車・事件
電気製品の窃盗容疑・事件
ガラスの運搬・事件
乳母車「好きにすれば」・事件
ざっと思いだしてもこのぐらいあります。
どんな事件だったのでしょうか?
取るに足りないようなことだったのかも知れません。
自動車の鍵・事件は、有名な観光地リューデスハイムでの出来事です。
(つづく)
有名な観光地リューデスハイムでの出来事です。
週末になると、2歳と4歳の息子たちを連れてリューデスハイムに行っていました。
ブドウ畑の広がる街。ワインの産地です。
ライン川沿いの駐車場に車を止めて、ブドウ畑を登っていくととても眺めのよい場所まで行けます。小さな子供にも楽しいハイキングコース。
その日も、ハイキングコースの入口にある駐車場に向かって車を走らせていました。
駐車してある自動車を見ながら、駐車場所を探していると、
なんと、ドアにカギをさしたままの一台の自動車を見つけました。
これは、助けてあげなきゃ!!
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有名な観光地リューデスハイム。
ドアにキーをさしたままの一台の自動車を見つけました。
これは、助けてあげなきゃ!!
急いで、どうにかしなければ車が盗られてしまうかもしれない・・
目の前にはレストランがある。
「あなたの車のドアにキーが差しっぱなしでした。
キーは道路の向かい側のレストラン○○○にあづけてあります」
というメモをワイパーに挟んで、レストランにキーを持ち込み、
自分の車に戻る・・・おそらく数分程度だろう。
そう見込んだ私の体はすぐに動きはじめました。
・・・
思い通りに事は進みました。レストランの人も快くキーを受け取ってくれました。
息子たちにも、こうやって人助けをするんだよ・・・などと得意になって話しました。
数時間ハイキングをして、黄昏の中悠々と流れるライン川を後に帰宅しました。
とても楽しい週末が過ぎたのです。
・・・
数日後、自宅の郵便受けにとても地味な色の封筒を見つけました。
役所から来る手紙は、いつもこんな封筒です。
送り主は、先週末遊びに行ったリューデスハイムの街を所管するヘッセン州の州都ヴィースバーデン(Wiesbaden)の警察です。
はっ!としました。車のキーのことを思いだし、警察から感謝状でももらえるのかな・・と思いました。
少しワクワクしながらそわそわと封を切ると、出てきたのは
「Bußgeldbescheid」なる代物。
要するに「駐車違反の罰金通知書」。
場所は、リューデスハイム。
日付は先週末。
冗談じゃない!
すぐに警察に電話しました。
この手の文書にはWiderufen(撤回要求)するための窓口が書いてあります。
・・・
これはどういうことですか?
「書いてある通りです。」
私はあの時・・・で・・・だったので・・・(事情を説明しました)
「駐車禁止は、駐車禁止です!」「証人もいます。」
「通りの反対側の居住者から通報がありました」
えっ! えっ! でも彼は事情を知らないでしょ。今お話した通りです。
罰金を取り下げてください!!
「Da kann man nichts machen! どうしようもありません!!」
(「証人がいます」???
ドイツの街でよく見かける光景。
アパートの窓から、何をするでもなく日がな一日通り眺めている
お年寄りがいます。ああこういうことか・・・??)
***
言葉に自信もなく、ドイツ人とやり合う強さ方法も知らなかった若い時でした。
これ以上何もできませんでした。
その後、ミュンヘン日本人国際学校で事務局長・理事をした後は、こういう時にどうしたらいいか分かるようになりました。いくらでもやりようがあったのですが、当時は、まだまだ知らないことできないことばかりでした。理不尽な思いのまま、罰金を支払ったのです。
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この程度は大丈夫だろう、だって良いことをしているのだから・・・
この考え方は通らない国なんだ。
私はこれに懲りず、まだまだ同じような失敗を繰り返します。