矢印は子ども!「人生100年時代を生き抜く子を育てる!個別最適化の教育(西川 純 著 学陽書房)」より、 「第5章 個別最適化を実現する未来」の章の一節「特別支援の子どもに何が必要か?」より、 私たちは2年間かけてインタビュー調査を行いました。調査対象は特別支援学校を卒業して10年、20年経った人の保護者とその人たちが働いている事業所の人です。質問は学校で何を学べばいまの仕事・生活で役に立つかを聞いたのです。その結果、「四則演算を覚えて欲しい」「漢字を読めるようにして欲しい」というようなことを言う人はいませんでした。我々は「計算ができなかったら仕事ができないのではないですか?仕事をするならば日本語を読めなれければならないのではないですか?」と聞きました。すると事業所の人は「我々はその人に合った仕事を探します。その人に合った指示を行います。文字が読めなかったら、マークや色を使って指示します」とこともなげに言われます。そして、事業所の人が学校で学んで欲しいこととしてあげたのは、人とのつながりを持てるようになることです。そして、失敗する経験をさせて欲しいと言うのです。 残念ながら、心優しい教師が特別支援の子どもを守ろうとします。結果として、多様な人とつながる機会を奪っているのです。そして失敗しないようにと先回りして段取りを組みます。そのために子どもは失敗しません。仮に失敗したとしても、それは失敗ではないとその子に言います。このような教育を受けた子どもは事業所で人間関係をつくることができません。さらに失敗し、それを事業所の人から指摘されたとたんに「虐められた」と思ってしまうのです。結果として事業所を辞めて、家に引きこもってしまうケースは少なくないのです。 大人が関われば関わるほど、子どもを分断してしまいます。付かず離れず、まるで黒子のような存在がいいのです。できる限り子ども同士で寄り添え、話し合え、支え合えればいいのです。それが子ども同士をつなぐことになるのです。真面目な教師であればあるほど、「自分がなんとかしなくては」や「自分の仕事やから」と、矢印を、自分に向けてしまいがちです。そうではなくて、矢印は子ども。そして、その子供同士の矢印を向かい合わせればいいんです。そのための助言やサポートをすればいいんです。「どうした?」「なんか困ってる?」「あの子困ってるみたいやで」など、子どもたちが互いに関心が持てるようにつなぐ言葉を使ったり、通訳者になったりすればいいのです。 そのためには、大人が子どもから学ぶ姿勢を持つことです。そして、子どもの持つ力を信じることです。 |
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