学校日記

今日の一言 8月2日 外国語教育に想うこと(3)

公開日
2022/08/02
更新日
2022/08/02

校長雑感 一隅を照らす

大きな意味での「転職」を経験したのは、今から30年ほど前。
それまで全く興味のなかった業種へ、それこそ生きる為に転職しました。

・・・・
なんと、
契約書は英語で書かれていました。
日系の企業だったので面喰いました。

それまで、私にとって外国語とは「ドイツ語」のことで、「英語」ではありません。

「英語」は、主に「記憶力と勤勉さをテストする」ものでした。
高校受験・大学受験に合格し、大学を卒業するためです。

・・・・

契約書に書かれてあるのは、もちろん

「物語」でもなく
「エッセイ」でもなく
「格言」でもありません。

見慣れない単語や文体が並んでいます。
Employment Period
Work to be Performed
Annual Paid Vacation Days
Salary Calculation Period
Termination of Employment

まず英語の辞書を探しました。使う予定もなかった本がよくあったと思いますが、奇跡的に見つかりました。ひとつひとつ単語を調べると、「解雇」などと物騒な単語があり、心細くなってきます。

例えばこんな文章も、わけが分かりません。(今となっては、何でもない文章なのですが・・・)
Two half vacation days shall be calculated as one full vacation day,
but half days may only be taken a total of twelve times.

shallとmayと、どう違うんだ???

・・・・

「この契約書を邦訳しなさい。上手く邦訳できたら採用します。」
などと言われているのではありません。

「おめでとう君を採用します。契約書にサインしてください」と
言われただけなのです。

・・にもかかわらず、パニックになるほど、英語が【できません】でした。

****

会社の同僚の驚きと軽蔑のまなざしに「いよいよ英語が必要であること」にとうとう気づきました。

英語で有名な東京にある大学を出たというその同僚に教えを乞いました。
「今から、仕事で使える英語を勉強するために、どんなテキストで勉強したらいいだろうか?」

ん〜と、しばし考え込んだあと、教えてくれました。
「Cambridgeの文法の本(写真)がいいかも、やってみます?」
 
しばらく勉強してみると、あの難解だった契約書の英語がそんなに難しくなくなっていました。仕事でも、思いのほか困らなくなってきていました。

* * *

しかし
私の英語は、かなり限定された範囲のみで有効でした。

仕事で使う英語は、毎日ほぼ同じセンテンスの繰り返しです。
業界で頻繁に使われているabbreviation(短縮した単語や文。たとえばASAPなど)も慣れれば、何とかできるものです。
ところが、日常会話はできないのです。
当時フランクフルトに住んでいましたが、街中で観光客と思わしき人から英語で【道】を訊かれても「英語」では答えることができませんでした。
「ドイツ語、話せますか?」と言ってしまいます。

仕事で英語を使えても、道案内もできないし、ましてや様々な単語が出てくる世間話など一切できません。

* * *

さて、私は英語ができないのでしょうか?
できるのでしょうか?

(つづく)