学校日記

〈静かに、しかし確かに、心がほどけていく瞬間〉隠岐の島町の見送り

公開日
2025/06/13
更新日
2025/06/13

お知らせ

汽笛の音が静かに響き渡ったそのとき、生徒たちは隠岐の島町に最後のまなざしを注いでいました。船は港を離れ始め、陸との距離がゆっくりと広がっていく。まるで心の中でも、何かがゆるやかにほどけていくような感覚がありました。

岸には、西郷南中学校の生徒たち、そしてトートバッグ作りで深く関わってくださった加藤さんの姿が。大きく手を振りながら、誰一人として「形式」で見送る人はいませんでした。その眼差しには、ほんとうに“また会いたい”という想いが宿っていて、それがはっきりと、生徒たちの胸に届いていたのです。

別れに言葉は不要でした。生徒の中には、堪えきれずに涙を流す者も。誰かに見せるためでもなく、ただ心の底から自然にあふれた涙。そのひと粒に、出会いへの感謝と、別れの切なさ、そして“何かが変わった”という確かな手応えが宿っていました。

海の上を進むフェリーの甲板で、子どもたちは立ち尽くし、遠ざかる島影を最後まで見つめていました。振り返るのではなく、“刻む”ように。それは、地図には残らない記憶の航路を、それぞれの胸に描いている時間でもありました。