高速船の張り紙が「問い」になる。? 海流と生態系から広がる学びの視野 ?
- 公開日
- 2025/06/11
- 更新日
- 2025/06/11
お知らせ
「レインボージェット」にて豊かな学びが展開されています。
乗船して間もなく、生徒の一人がある掲示に注目しました。
「航海中には、クジラなどの海洋生物や海中浮遊物等との接触を避けるため、急旋回・緊急着水を行う場合があります。」
この張り紙は、日常生活ではまず目にしないものです。
とくに大阪湾や瀬戸内海を航行する一般的なフェリーでは、同様の警告表示は多くありません。
その掲示を見たある生徒が、ふと問いを発しました。
「同じ日本の海域なのに、なぜ大阪湾ではこのような注意が少ないのだろう?
もしかすると、*外洋性生物の分布密度や海流構造*に違いがあるのでは?」
??短い発言でしたが、そこには明確な「仮説形成」の芽が宿っていました。
【地理的・生態的な差異への気づき】
実際に、大阪湾と日本海とでは、海洋環境に顕著な違いがあります。
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**大阪湾(瀬戸内海)**は、内湾性の閉鎖系に近く、潮流の流動性が比較的低く、外洋生物の回遊も限られています。生態系は沿岸種中心。
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一方、*日本海は開放海域*
であり、リマン寒流や対馬暖流が交錯する動的な海流環境にあります。この環境においては、クジラやイルカなどの大型海洋生物の回遊も報告されています。
この違いが、船の運航方針や安全対策にも直結していることを、生徒は「掲示物を通して」実感したのです。
【教育的意義:知識の受容から知の構築へ】
このような瞬間にこそ、探究学習の本質が表れます。
生徒が「なぜそうなっているのか?」と問いを発すること。
そしてその問いが、
*地理・生態・技術・安全という多領域に連結し、深い学びの契機となること。*
知識を与えるのではなく、「知識が生まれる瞬間」に立ち会うこと。
これは教師にとって何よりの教育的成果です。
たった1時間弱の乗船時間に、ここまでの密度ある学びが展開されることは、
本校の探究学習が単なる形式ではなく、*実体として根づいている証左*と言えるでしょう。
自然と対話し、掲示物を「意味のヒント」として読み解く
その行為そのものが、探究の根幹です。
本校3年生は、今この旅路の中で、
「見る」「考える」「つなげる」「問う」その全てを体現しています。
そしてこの後、隠岐の島という“リアルな教材”の中で、さらなる学びが始まります。
今後の活動にも、どうぞご期待ください。