卒業証書授与式 式辞
- 公開日
- 2021/03/12
- 更新日
- 2021/03/12
校長メッセージ
式 辞(全文)
51期生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。中庭の桜の芽も膨らみ、陽ざしにも春の訪れを感じる、この佳き日に、大阪市立長吉西中学校を、巣立っていく皆さんに、教職員を代表して、心からお祝い申し上げます。
通常ならご来賓からのお祝いの言葉やPTA会長の祝辞など卒業式らしく華やかな雰囲気の中での校長の式辞なのですが、新型コロナウィルス感染症防止の観点から卒業式自体を縮小し、時間を短縮して挙行しなければならないことは大変心苦しいことだと思っています。
しかしながら、このような状況下で卒業式を迎えることは、「災いを転じて福となす」を身をもって体現するチャンスととらえることができるのかもしれません。悪いのは人ではありません。悪いのはウイルスなのですから。
改めて卒業生のみなさん、ご卒業おめでとうございます。君たちとの出会いは「29分の大遅刻」のエピソードを抜きに語ることはできません。平成30年5月31日、一泊移住の朝の出来事でした。朝の集会が予定では七時から始まることになっていました。ところが、十分経っても、パラパラとしか集まってきません。二十分経ってもやっと半分くらいの集合状態でした。整列完了したのが729分。大げさでなく、長吉西中学校においての歴史的な出来事でした。もちろん、しっかりとお小言をもらい、その日がスタートしました。みなさんも、もちろん覚えていますよね。「この学年は大丈夫なのかな」と一瞬頭をよぎりました。
しかし、それからの君たちの成長は目を見張るものがありました。本来なら、保護者の皆様の声援を受けて行われるはずの無観客で実施された体育大会においても、立派に最上級生として後輩を引っ張ってくれました。そして、中学校生活の最大のイベントである修学旅行。当初の予定では5月21日の出発でしたが、休校措置が続いたため、10月7日に変更となってしまいました。しかし、君たちは不満を漏らさず、ある意味、淡々とその事実を受け止め、その日を迎えてくれました。そして、場所も長野県南信州に変更となりましたが、「29分の大遅刻」を補って余りある活動ぶりでした。あれから、約3年。君たちは本当に成長してくれました。
ここで、卒業に際して、君たちにはなむけの言葉を贈りたいと思います。
それは、「心配事の九割は起こらない」という事実です。アメリカのペンシルバニア大学の発表した論文にその結果が報告されています。「心配事の79%は実際には起こらず、16%の出来事は事前に準備をしていれば対処可能」だと。裏返して言えば、心配事の起きる確率は五%ということです。この5%で起きることとは、昨日、10年を迎えた東日本大震災のような未曽有の天災などのことで、自分ひとりの力ではどうしようもないことなのです。一方、今回の新型コロナウイルスに関しては微妙で、発生したことは確かにまれですが、ワクチンを日本で製造できなかったことは「事前に準備できていなかった」と言わざるを得ません。それはさておき、心配事をもっと自分のことに引き付けてみましょう。自分では5%のことが起こったと感じた時にどう対処すればいいのでしょうか?これも研究結果があります。同じ悩むのであれば、積極的に悩むことが重要で、「解決できなかったらどうしよう」ではなく、「どうすれば解決できるか」と、ポジティブに悩むことです。行動しなかったことに対する後悔は、その後ずっと尾を引くという研究結果もあります。
義務教育9ヵ年を修了して、いよいよ大人に近づきます。3年たてば、選挙権も手に入ります。ことは言うほど簡単にはいかないかもしれませんが、世の中で起きることのほとんどのことは、対処できることだと思い、ポジティブに悩み、行動を起こしましょう。
最後になりましたが何よりも今日の日を楽しみに待ち望んでこられました、卒業生の保護者のみな様にお祝いを申しあげます。
みな様には、長い間、本校教育の推進にご理解とご協力を賜り、ありがとうございました。このような状況下でありながらも、みな様のお子さんは今日ここに臨みました。動揺することなく立派に成長した姿をここに見せてくれています。ぜひともその姿を目に焼き付けいただきたいと思います。
お別れの時が近づいてきました。
卒業生のみなさん、まずは前を向いて歩いていってください。しばらくの間は振り返らずいろんなことに挑戦してください。
そして、そして、どうしても思い悩んで、くじけそうになったときは、中学校を訪ねてください。長吉西中学校は、いつまでもみなさんの母校なのですから。
卒業生の前途に、幸多かれと祈り、この五十一期生に関わってくださったすべての方々に感謝を申しあげ、式辞といたします。
令和三年年三月十二日
大阪市立長吉西中学校長 福井 司