学校日記

3学期始業式【校長講話】

公開日
2022/01/11
更新日
2022/01/11

校長メッセージ

新年、あけましておめでとうございます。

 3連休もあって、いつより長めに感じる冬休みでしたが、元気に過ごしていましたか?またもや、新型コロナウイルスのオミクロン株の影響で感染者が急増しています。しかし、いま私たちができることは、これまで通り、「マスクをする」「手洗いをする」「部屋の換気を十分にする」ことだけです。それに加えて、人込みには極力出かけないことも必要です。

 12月にNHKのテレビで「クローズアップ現代」という番組をやっていました。そこでは、インクルーシブ社会をめざす中で「マイクロアグレッション」という言葉があることを初めて知りました。「インクルーシブ」という言葉だけでも、わかりにくいのに「マイクロアグレッション」なんて言われても、もっとわかりませんよね。そこで、冬休みの間に少し調べてみました。
 「インクルーシブ」という言葉だけは、今日初めて聞いたという人があれば、ぜひ覚えて帰ってください。直訳すれば、「包括する」とか「内包する」とかという意味です。「インクルーシブ」という言葉を理解するためには、その反対の言葉から意味をつかむ方が早いかもしれません。「インクルーシブ」の反対は「エクスクルーシブ」と言います。「排除的、排他的」という意味です。言い換えれば、「一部の人を外へ追い出す」「のけものにする」ということですね。いま現在も私たちの社会には「排除されてきた人たち」「排除されている人たち」がいるという事実に気づかなくてはなりません。つまり、差別の現実から目をそむけてはならないということです。これからは、「SDGs」の17項目とともに「インクルーシブ」な社会を作ること、すなわち「誰をも排除しない」社会を作っていくことが君たちの使命であることを自覚してください。
 さて、君たちはこれまでに、「別に誰かを排除したつもりはない」と思っているかもしれません。しかし、日常的に、無意識のうちに相手を傷つける言葉かけや行動をしてしまっているかもしれません。これを「マイクロアグレッション」というそうです。「マイクロ」はこの場合は「日常の」、「アグレッション」は「攻撃性」という意味です。ややこしいので、この「マイクロアグレッション」という言葉は少し横に置いておきましょう。
 たとえば、外国の人に対して「日本語が上手ですね」(裏のメッセージ:あなたは日本人ではないのに)ということや、女性に対して「結婚しないの?子どもは?」などと聞くこと(裏のメッセージ:女性は結婚して子どもを産むべき)などがこれに当たります。「自分にはアフリカ系の友人がいるから、黒人差別はしない」などと自分に「知らずうちに身についた偏見を含んだ考え」がないことをアピールするような発言なども当てはまります。ほかにも、「自分の周りには障害をもつ人はいない」など、自分は知らないだけなのに「存在しない」ことにしてしまうような発言もあるようです。発言している方は相手を傷つける気持ちはありません。むしろ善意のつもりで発しているにもかかわらず相手を傷つけてしまっているという場合があります。無自覚なだけに、とても厄介なことですね。
 先ほどの例で考えてみると、見た目で判断して英語で話しかけたり、「日本語がお上手ですね」という言動の裏に、言われたほうは「自分は日本人とは違うのはそうなんだけど、なぜわざわざ?」というメッセージを感じ取ってしまう場合があります。少し前までは君たちの保護者を「父と兄と書いて父兄」と呼んでいました。今は、「保護者」というのが当たり前ですが、校長先生より高齢の方は、何気なく使っている例もあります。君たちの保護者は父や兄だけではありませんよね。戦前からの男尊女卑の考えを引きずっているわけです。マスコミでも、放送禁止用語となっています。
「自分は友だちだ、親友だ」と思っている人たちの感じ方もそれぞれです。言われ続けてきたので、いまさら「そういうことは言わないで」と内心は思っている場合もあるかもしれません。悪意がないとしても、受け手は不快な気持ちになるだけではなく、場合によってはそれが相手を傷つけることになってしまっていることもあります。つまり、私たちの誰もが「知らずうちに相手を傷つけてしまう」ことや反対に「傷つけられてしまう」こともあるということです。
 君たちの中には「そんなことを気にするの?気にしなければいけないの?」と思った方もいるかもしれません。「なんか、喋りにくいよな」と思う人もいるかもしれません。ただ、人によって感じ方はさまざまです。相手に悪意がないことを知りながらも、傷つき複雑な思いを抱える人もいるということを、知っておくことと、知らないのでは大きな違いがあります。そのことだけはわかって欲しいと思います。大切なことは、いつも相手の感情を想像しながらコミュニケーションを取ることです。その小さな一歩が「インクルーシブ」な社会を作ること、すなわち「差別のない社会」を作ることにつながることになると思うからです。
 さあ、3学期が始まります。とりわけ、3年生のみなさんは進路に向けての私学入試が、目の前に迫ってきました。準備はしっかりとできていると思います。体調にはくれぐれも気をつけてください。1年生、2年生のみなさんも体調管理に気をつけて、悔いのない中学校生活を送ってください。以上です。